2010 Fiscal Year Annual Research Report
親電子性物質により発現誘導される酸性スフィンゴミエリナーゼの生理的機能の解析
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21790132
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
熊谷 剛 北里大学, 薬学部, 助教 (30365184)
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Keywords | ストレス / スフィンゴ脂質 / 炎症 / 脂質ラフト |
Research Abstract |
昨年度、親電子性物質により発現誘導された酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)が、TNF-αによる炎症性サイトカインIL-6の発現誘導を増強することを明らかにした。本年度はそのメカニズムについての詳細な解析を行い、研究課題の最終目標であるASMaseが細胞障害誘導に果たす役割の解明を行った。 まず情報伝達経路に関わる分子の発現変動に着目して解析した結果、TNF-α受容体1(TNFR1)やNF-κBなどの発現量には変動がなかったことから、感受性の亢進が関連分子の発現量の変動に寄与しているものではないことを明らかにした。そこで次にSMaseの代謝産物であるセラミドを多く含み、外部刺激の情報伝達において重要な役割を果たすことが知られている細胞膜上での脂質ラフトの形成に着目して、ASMase特異的阻害剤を用いた薬理学的およびASMaseを標的としたsiRNAを用いた分子生物学的方法により解析した。その結果、親電子性物質によるASMaseの発現誘導に伴い、細胞膜上での脂質ラフトの形成が促進されること、それに伴ってTNFR1の脂質ラフトへの移行が亢進されることを明らかにした。さらに脂質ラフトを破壊することによりTNF-αによるIL-6の発現誘導が抑制されたことから、脂質ラフトの形成亢進がTNF-αによるIL-6の発現誘導に関わっていることを実証した。 以上の結果より、代表者は親電子性物質により発現誘導されたASMaseは、脂質ラフトの形成を促進して炎症反応を亢進することで細胞障害誘導に寄与していることを明らかにした。親電子性物質に暴露される環境では、気管支炎や肝炎など炎症反応を伴う疾病を引き起こしやすい。今回の成果は、これらの疾病の発症におけるASMaseの関与を明らかにし、ASMaseを標的とした治療と予防法の開発に繋がることが期待される点から意義ある成果であると考える。
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Research Products
(2 results)