2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤の血液毒性を決定付ける薬物トランスポーターの役割
Project/Area Number |
21790145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 和哉 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (00345258)
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Keywords | 血液毒性 / トランスポーター / 好中球 / 抗がん剤 / 体内動態 / OATP1B3 / MRP2 |
Research Abstract |
本研究においては、過去の臨床研究より導かれたdocetaxelの血液毒性と薬物トランスポーターOATP1B3,MRP2の遺伝子多型との関連を見出したことに端を発し、抗がん剤の血液毒性を決定づける薬物トランスポーターの役割を解明するものである。本年度は、前年度までに得られたOATP1B3,MRP2がdocetaxelの輸送に関係するという事実に基づき、docetaxelの血中濃度推移、血球減少に与える影響をすべて考慮したPK/PDモデルを構築し、OATP1B1,MRP2の機能がどの程度変化した場合、好中球減少のリスクがどの程度高まるかについて、定量的なシミュレーションによる解析を実施した。Docetaxelのクリアランスや好中球減少に対する影響を規定するEC50値の個人間変動をモンテカルロシミュレーションにより再現し、一定のpopulationにおける重篤な好中球減少が起こる割合を推定した。その結果、先の臨床研究で発見されたOATP1B3.MRP2の遺伝子多型により、輸送機能が41%,36%にまで低下していれば、臨床報告と同様の好中球減少のリスク上昇が起こりうることを示すことができた。この業績は、現在海外学術誌に投稿準備中である。 このような解析を通じることで、抗がん剤を基質とするトランスポーターの機能が変動した際に、抗がん剤による好中球減少のリスクを集団内のばらつきを考慮したうえで推定できる可能性が示唆された。さらに、この機能減少を定量的に説明するために、OATP1B3,MRP2について、それぞれヒト試験で用いうるプローブ薬物の探索を行っている。その結果、OATP1B3については、telmisartanが選択的基質として用いうること、また、MRP2については、肝シンチグラムによりGd-EOB-DTPAを用いて定量可能である可能性が示唆された。
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Research Products
(11 results)