2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトオーファンカルボキシルエステラーゼの薬物動態および毒性発現における関与
Project/Area Number |
21790148
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
深見 達基 Kanazawa University, 薬学系, 助教 (00532300)
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Keywords | 薬物代謝 / 加水分解 / 薬物誘発性肝障害 |
Research Abstract |
ヒトアリルアセタミドデアセチラーゼ(AADAC)は癌原性物質2-アセチルアミノフルオレンを加水分解する酵素として単離されたが、薬物代謝の面において研究がなされていない。前立腺癌治療薬フルタミドは副作用として稀に起こる肝障害が問題となっており、推定されている発症メカニズムの最初のステップが加水分解反応である。多くの薬物の加水分解に関与することが知られているカルボキシルエステラーゼ(CES)がこの反応を触媒しないことが報告されているため、フルタミドの加水分解を担う酵素がAADACではないかと考え、解析を行った。AADAC、CESIA1、CESIA2およびCES2のバキュロウイルス発現系を作製し、フルタミド加水分解酵素活性を測定した結果、AADACのみがフルタミド加水分解酵素活性を示した。ヒト肝ミクロソーム(HLM)とAADAC発現系を用いたフルタミド加水分解酵素活性に対する阻害実験、様々な臓器におけるAADAC発現と加水分解酵素活性の有無の比較や個人HLMにおけるAADACタンパク質発現量と加水分解酵素活性の相関実験からもAADACがフルタミド加水分解反応を触媒する主な酵素であることを明らかにした。フルタミドの他に、解熱鎮痛薬フェナセチンも加水分解産物と腎毒性の関連が報告されており、現在はその毒性を理由に使用されていない。しかし、フェナセチンの構造類似体であるアセトアミノフェンは現在も臨床で使用されており、体内で加水分解反応が起こりにくいと考えられている。本実験ではAADACがフェナセチンの加水分解反応を触媒する主要酵素であることを明らかにし、AADACはHLMと同様にアセトアミノフェンの加水分解能が非常に低いことも明らかにした。このようにAADACのフェナセチンとアセトアミノフェンに対する基質特異性の違いが毒性発症頻度に影響を与えていることが考えられた。以上、本年度はAADACがフルタミドやフェナセチンの加水分解反応の主要酵素であることを明らかにし、毒性発現において重要な酵素である可能性が示唆された。
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