2010 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞の分化能を改善する因子の同定-単為発生細胞の性質改善技術の応用-
Project/Area Number |
21790300
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
引地 貴亮 国立国際医療研究センター, 細胞組織再生医学研究部, 上級研究員 (80392083)
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Keywords | 単為発生 / 核移植 / 幹細胞 |
Research Abstract |
正常受精胚由来のES細胞にsiRNAを導入し、ノックダウンによる細胞の分化能の変化を、神経系幹細胞への分化誘導により検定した。6種類のsiRNAをそれぞれ導入した細胞で、50%異常の発現抑制効果が確認された。これらの細胞を正常なES細胞と同様の培養条件化では、細胞の増殖速度に変化は無く、また形態の異常も認められなかった。これまでの研究により、単為発生胚は胎盤が正常に発生せず、胎盤発生に重要とされるインプリンティング遺伝子Peg10の発現量が低いことが知られていたが、核移植後の単為発生胚では正常な大きさに胎盤が発生することが見いだされた。核移植後の単為発生胚を4倍体法により胎盤だけへと発生するように操作し、胚盤胞期に正常なES細胞を卵割腔へと注入したキメラ胚では、胎盤が単為発生細胞由来であるにも関わらず胎児は正常に発生し、正常な産子が得られた。このことは核移植後の単為発生胚が完全な機能を持った胎盤の形成能を獲得したことを意味する。さらにこの時、Peg10の発現量が正常な胎盤と同程度に回復していることが確認された。インプリンティング遺伝子H19、Igf2、Igf2rの制御領域のメチル化状態は核移植前後で変化していなかったが、Peg10上流のメチル化だけは正常受精胚での状態に近づいていた。一方で、正常な胚由来の胚盤胞へ核移植後の単為発生細胞を移植し、産子を得ることを試みた。核移植を繰り返すことで胎児期の発生は少しずつ改善されたが、受精後14.5日目以降まで発生することはなかった。以上の結果から、核移植を用いることにより、発生能のきわめて低い細胞に対して、その性質を改善し正常な機能をもたらすことが可能であることが示された。
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Research Products
(2 results)