2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規癌抑制遺伝子DACH1が制御する転写ネットワークの解析
Project/Area Number |
21790380
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 亮 Kyoto University, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点教授 (60506765)
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Keywords | 脳腫瘍 / 癌幹細胞 / 分子生物学 / 癌抑制遺伝子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳腫瘍で欠失の見られる候補癌抑制遺伝子DACH1の機能を明らかにすることである。本年度は、脳腫瘍細胞株においてDACH1を発現することで観察される現象を解析した。(1) ドキシサイクリンでDACH1の発現量を制御できる脳腫瘍由来細胞株を樹立し、DACH1を強制発現させると、腫瘍幹細胞様のスフェロイド形成が抑制され、DACH1の発現低下が腫瘍幹細胞の維持に必要であることが示唆された。(2) マイクロアレイ解析によってDACH1の発現によって量的な変化を受けた遺伝子群を同定し、IL-6を初めとするサイトカインが顕著に発現抑制を受けることが明らかになった。同時に、腫瘍幹細胞の培養に必須であるFGF-2の発現も大きく抑制された。(3) DACH1を発現させた脳腫瘍細胞株にFGF-2を添加することで、腫瘍幹細胞様のスフェロイド形成が促進され、その細胞をマウスに移植すると腫瘍形成能の亢進が見られたことより、脳腫瘍ではDACH1の発現が低下することでFGF-2の発現亢進を促すことで腫瘍が形成される結果を得た。これらの結果は、脳腫瘍の発生段階で欠失するDACH1が腫瘍の形成を抑制する役割があることを示している。現在、DACH1のマウス体内における役割やDACH1が発現を制御するサイトカインやFGF-2を中心とした遺伝子ネットワークの解明を進めているところである。
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