2009 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性腸疾患における消化管運動機能障害に対する漢方薬の有効性についての検討
Project/Area Number |
21790629
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鬼頭 佳彦 Nagoya City University, 大学院・医学研究科, 助教 (60381787)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / カハールの介在細胞 / 平滑筋 / 自発活動 / 結腸 |
Research Abstract |
炎症性腸疾患に対する漢方薬の有効性を検討するにあたり、まず炎症性腸疾患モデル動物から摘出した平滑筋標本の性質を調べる目的で近位結腸縦走筋標本を用いて収縮実験を行った。実験的大腸炎モデルラットは、雄性Wistarラットへ5%DSSを5~7日間自由飲水させることで作製した(DSS投与ラット)。DSS投与ラットでは著明な体重減少(185±11g(DSS), 203±8g(control), p<0.05)及び、下痢・下血が観察された。 1. 正常ラットの近位結腸縦走筋標本は1分間あたり約1.5回の自発収縮を発生した。一方、DSS投与ラットでは自発収縮の発生頻度は正常ラットに比べて有意に増加していた(約2.6回/分、p<0.05)。正常ラットにおける近位結腸縦走筋自発収縮は、ジクロフェナック(非選択的COX阻害剤)、NS398(COX2選択的阻害剤)によって消失したのに対し、DSS投与ラットではジクロフェナックにより自発収縮の振幅及び発生頻度は減少したものの、消失することはなかった。 2. 正常ラットの近位結腸縦走筋標本では、カルバコール収縮時における経壁電気刺激(TNS)によって弛緩反応が観察された。弛緩の振幅および持続時間は刺激頻度依存的に増加した。TNS誘発弛緩はNO合成酵素阻害剤であるニトロアルギニン(LNA)で抑制される成分(LNA感受性成分)と、抑制されない成分(LNA抵抗性成分)とに分けられた。LNA抵抗性成分はさらにMRS2179(P2Y受容体拮抗薬)で抑制される一過性成分とVIP受容体拮抗薬で抑制される遅延性成分に分けられた。また、TNS誘発弛緩消失後にはRP67580(NK1受容体拮抗薬)感受性の遅延性収縮が発生した。DSS投与ラットではLNA感受性弛緩成分が減少し、RP67580感受性の遅延性収縮成分が増加していた。 DSS投与ラットでは自発収縮の頻度の増加、抑制性神経の機能低下、及び興奮性神経の機能亢進が確認された。これらの変化が生じた結果、ICCと自律神経の協同作業のバランスが崩れ、結腸における律動的な蠕動運動が損なわれているのだと思われる。
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Research Products
(2 results)