2010 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-β・Notch協調による腸上皮化生進展および胃食道癌幹細胞誘導機序の解明
Project/Area Number |
21790647
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅野 直喜 東北大学, 病院, 助教 (20526454)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / TGF-β / 腸上皮化生 / NFκB |
Research Abstract |
Helicobacter pylori(H.pylori)感染による上部消化管における腸上皮化生の進展にはホメオボックス遺伝子Cdx2が深く関与しているが、その発現・制御に関しては十分に解明されていない。そこで、まず腸上皮化生関連遺伝子Cdx2の発現制御機構を免疫学的な観点から明らかにすることを目的として検討を進めた。H.pylori感染胃癌培養細胞株に対して、各種阻害薬を用いた解析により、H.pylori刺激によるCdx2の発現制御機構にはNFκBの活性化が必要であることが解明された。さらに、TGF-β刺激でもCdx2の発現が増強されることが明らかとなった。反面、TGF-βの作用を増強するNotchは、活性化Notchを強制発現系や、γセクレターゼ阻害薬を用いた検討から、直接的にCdx2の発現増加には関与していないことが判明した。 さらにNotchによる胃食道癌幹細胞誘導機序の解明のために、幹細胞マーカーの一つであるCD133に注目し、低分化型胃癌培養細胞株を用いて検討を進めた。ウェスタンブロットの検討からNotch1がCD133の発現を制御することが判明した。クロマチン免疫沈降法により、この発現制御はCD133のプロモーター領域にあるRBP-Jκ結合部位を介した直接的なものであることが解明された。さらに、Notch1およびRBP-Jκをノックダウンすることにより、低分化型胃癌培養細胞の増殖能および造腫瘍能が低下することがMTTアッセイとソフトアガーアッセイにより明らかとなった。また、実際の免疫組織化学の検討でも、ヒト低分化型胃癌症例の半数でCD133が発現していることが確認できた。 以上の本研究により、CD133陽性低分化型胃癌に対しては、Notch1シグナルを標的とした分子標的療法が有効である可能性が示唆され、臨床的基盤の一端が解明されたと考えられる。
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