2010 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキシレドキシン6(Prx6)による腸管炎症制御機構の解明
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21790680
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
岡田 ひとみ 京都府立医科大学, 医学部, 助教 (60533023)
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Keywords | 腸管炎症性疾患 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は難治性・再発性の腸管炎症性を主体とする疾患群であり、若年者に多く罹患率は増加する傾向にある。しかし、根本的な治療法は確立しておらず、対症的治療に終始することが多く、的確に病気の進み具合(病勢)を把握するマーカーも十分ではない。 研究代表者らはIBDにおける新規治療標的分子・病勢マーカーの探索のため、潰瘍性大腸炎モデルマウスの大腸粘膜を試料とした蛋白質発現量解析を行った。正常マウスにおける大腸粘膜と比較した結果、ペルオキシレドキシン6(Prx-6)の発現が大腸炎粘膜において特異的に低下していることが明らかになった。 IBDにおいて、酸化ストレスによるタンパク質の翻訳後修飾が疾患の発症、持続炎症、炎症性発癌などに関与する可能性が示唆されており、抗酸化酵素であるPrx-6は疾患組織の酸化ストレスに関与しているのではないかと考えられる。本研究は、Prx-6に焦点をあて、Prx-6のIBD炎症制御における役割を解明し、IBDの新規治療標的分子として提案することを目的としている。 研究代表者らは、マウス大腸上皮細胞(YAMC)に過酸化水素を投与することにより、Prx-6のシステイン残基の酸化が起こることが分かった。また、Prx-6-siRNAの導入によりPrx-6の発現を抑制したYAMC細胞では、過酸化水素に対する抵抗性が減弱し、創傷治癒も遅延した。これにより、Prx-6は細胞保護作用・創傷治癒作用を発揮している可能性が示唆された。 また、ヒト潰瘍性大腸炎において、炎症の原因となる顆粒球を除去する顆粒球吸着療法(GCAP)を行った患者の大腸粘膜においてPrx-6の発現を検出した結果、治療効果のあった患者の大腸粘膜ではPrx-6の発現が治療前より増加していた。 これらの結果は、Prx-6はIBD炎症制御に深く関与しており、IBDの治療効果を検討するマーカーとなる可能性を示している。
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