2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790746
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 智文 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (20468482)
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Keywords | 多能性幹細胞 / ES細胞 / iPS細胞 / 分化誘導 / 心筋細胞 / 再生医学 |
Research Abstract |
マウス胚性幹(ES)細胞/誘導多能性幹(iPS)細胞は、BMPアンタゴニストであるNogginを分化誘導のごく初期に作用させると、効率よく心筋細胞へ分化誘導することを見出していた(以下Noggin法)が、ヒトESなiPS細胞での効果は明らかではなかった。またESなiPS細胞を心筋細胞へ分化誘導すると心房筋、心室筋、伝導系心筋など不均一な集団に分化することが知られている。遺伝子改変などの手法で各細胞を取得する方法も報告されているが、この手法は再生医療には不適であり、それ以外では心房筋や心室筋特異的、かつ効率的な分化誘導系は報告されていなかった。申請者は、アスコルビン酸が心房筋分化を、レチノイン酸が心室筋分化を誘導するという論文報告とNoggin法を組み合わせ、Noggin法+アスコルビン酸処理、Noggin法とレチノイン酸処理によりそれぞれ効率よく心室筋または心房筋へ分化誘導できないかを検討した。その結果、Noggin法+レチノイン酸処理の効果は確認することができなかったが、Noggin法による一過的なBMPシグナル阻害とアスコルビン酸処理がマウスES細胞の心房筋分化を促進することを見出した。またNogginを用いた心筋分化誘導法はヒトiPS細胞でも有効であることを明らかにした。本年度の研究ではNoggin処理した心筋分化誘導におけるDNAアレイ解析を行い、そのメカニズム解析を行った。その結果発見したG-CSFは、分化誘導中期にヒトiPS細胞へ添加することにより、心筋細胞の増殖を亢進することを見い出した。Noggin法とG-CSF処理を組み合わせたところ、分化誘導促進効果と心筋増殖亢進効果も認められた。ヒトES/iPS細胞は心筋再生医療の細胞源として注目されているが、これらの成果は心筋再生治療の実現に向けた基礎研究として非常に有意義であると言える。
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