2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790823
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉田 啓 Jikei University School of Medicine, 医学部, 助教 (90408451)
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Keywords | 動脈石灰化 / 慢性腎臓病 |
Research Abstract |
透析患者では虚血性心疾患などの心血管合併症の保有率が健康人に比べはるかに高く、心血管合併症は透析患者の死因の半数以上を占める。最近、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)に伴う高リン血症などのミネラル代謝異常が血管石灰化および虚血性心疾患の関連因子であることが報告されている。CKD患者における血管石灰化は、組織学的特徴から内膜石灰化(Arterial Intima Calcification:AIC)と中膜石灰化(Arterial Media Calcification:AMC)の二つに大別でき、AICは動脈硬化の終末像であり、炎症や脂質代謝異常が原因と考えられているのに対し、AMCはCKD患者に特有の病変と考えられているが、その発現病期、機序は不明な点が多い。そこで剖検から得られた検体を用いて、CKD stageによる血管石灰化の発現病期ならびに発現機序の差異につき組織学的に検討した。 冠動脈中枢部に石灰化を認める早期CKD群5例および透析群14例を対象とし、マクロファージの指標であるCD68、血管平滑筋の骨芽細胞様形質転換の指標であるCbfa1/Runx2による免疫組織染色を行った。早期CKD患者ではAICにおける炎症を認めたが、血管平滑筋の骨芽細胞様形質転換は認めなかった。透析患者ではAICにおいては炎症と血管平滑筋の形質転換の両者を認めるのに対し、AMCにおいては炎症を認めず、血管平滑筋の形質転換を認めた。CKD患者の冠動脈石灰化はCKD病期により発現部位と機序が異なっており、高リン血症などのミネラル代謝異常が顕性化してくるCKD末期に血管平滑筋の骨芽細胞様形質転換により冠動脈石灰化が進行した可能性が示唆された。CKD患者の冠動脈石灰化の機序の解明はCKD患者の虚血性心疾患治療の進歩に貢献する可能性があると考えられた。
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Research Products
(1 results)