2010 Fiscal Year Annual Research Report
膵ベータ細胞スフィンゴ脂質受容体を標的とした新規2型糖尿病治療法の開発
Project/Area Number |
21790858
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
水上 浩哉 弘前大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00374819)
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Keywords | スフィンゴ脂質 / ベータ細胞 / 1型糖尿病 / G蛋白共役受容体 / S1P1 / Gi / β細胞アポトーシス / 膵島移植 |
Research Abstract |
前年度の結果ではβS1P1KOにおいてスフィンゴシン1リン酸(S1P)によるERK、P38、JNKのリン酸化がコントロールに比し、減弱が認められた。よって、確かにβS1P1KO膵島ではS1P刺激に対しGiシグナルが減弱していることが確認された。しかしながらグルコースに対するインスリン分泌の変化はコントロールと同程度であった。よって、β細胞におけるS1P1はインスリン分泌よりもむしろβ細胞の増殖、維持に関係している可能性がある。しかしながら、βS1P1KOにおける膵島容積の検討では明らかな差を見出せなかった。また、β細胞の増殖、アポトーシスを抗Ki-67抗体を用いた免疫染色、TUNELによりそれぞれ検討した。しかしながらコントロールに比べ明らかな差は見いだせなかった。 よりS1Pの効果がβ細胞増殖、アポトーシスに影響しやすい条件として膵島移植がある。移植膵島への攻撃因子として、血小板由来のS1Pがあり、S1Pは受容体であるS1P1に作用し細胞シグナル活性化や細胞死をもたらすことから、S1P作用を阻止することが膵島生着を改善させる可能性がある。そこでβ細胞の生存能に対するS1P1の影響を検討するため、膵島の移植実験を行った。糖尿病マウスへの少量膵島(80個)移植では、対照膵島では高血糖の改善なく、膵島生着をみなかったのに比し、KOからの膵島移植では、血糖の有意な改善を認めた。移植効果は2か月継続した。また、移植4時間後で移植膵島のアポトーシスを検討したところ、βS1P1KO膵島で有意なアポトーシスの抑制が認められた。組織的にも移植2か月後で肝門脈内に膵島の有意な生着をみた。これらの実験結果は、S1Pが移植膵島への攻撃因子であり、かつその作用を阻害することが移植膵島の生着の有効な手段となることを示すものである。S1P1阻害剤の開発より、あらたな糖尿病治療に結びつく可能性が考えられた。
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