2010 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザ脳症を誘発する感受性因子の解明を基盤にした診断・治療法の開発
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21790992
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
千田 淳司 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 助教 (20437651)
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Keywords | インフルエンザ / 脳症 / 多臓器不全(MOF) / ミトコンドリア / 脂肪酸代謝 / アデノシン三リン酸(ATP) / サイトカイン / 分子生物学 |
Research Abstract |
インフルエンザ罹患患児検体あるいは本研究で作出した遺伝子欠損マウスを用いた解析により、インフルエンザの重症化には以下の2つの因子が重要であることが明らかになった。 1.共通因子 インフルエンザ罹患後に一過的に起こるサイトカインの産生が、血管内皮障害・異所性トリプシンの過剰産生を引き起こし、このトリプシンがウイルスの増殖能を活性化するサイクル「Influenza virus-Cytokine-Protease Cycle」の存在が明確になった。 2.特定因子 ミトコンドリアの脂肪酸代謝酵素であるCPT2遺伝子上に特定の多型を保因する患児(特に日本人に多い)は、インフルエンザ罹患後の高熱時に本酵素の酵素活性の低下、すなわち全身組織のエネルギー(ATP)枯渇に陥り、エネルギー需要量の多い組織(脳・心臓)では機能不全に陥りやすいことを実証した。さらに小児では糖代謝と比べ脂肪酸代謝によるATP産生の依存度が高く、本多型の保因児ではウイルス罹患時に重症化すると判断した。 以上の結果を基盤にした診断・治療法の開発を実施した。 1.診断法の開発 インフルエンザを含む多様な疾患で重症化する患者では血液を含む全身組織でATPが枯渇することを見出し、患者の未梢血中のATPの定量を基盤にした革新的な重症度診断法を開発した。 2.治療法の開発 インフルエンザの重症化の主要因は全身性のATPの枯渇、すなわちミトコンドリアの脂肪酸代謝の低下が原因であることから脂肪酸代謝の改善薬(Bezafibrate)の投薬が有効であることを見出した。他にも、脂肪酸代謝の代わりに糖代謝を亢進させてATPの枯渇を防止する治療法(ジクロロ酢酸誘導体の投薬)がインフルエンザの症状を劇的に改善することを見出した。 上述した治療法はマウスを用いた動物試験の結果であり、今後はこれらの治療法がヒトでも有効であることを慎重に検討し、評価する予定である。
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Research Products
(14 results)