2011 Fiscal Year Annual Research Report
育児期の女性における不安・抑うつと虐待危険性に関する精神医学的研究
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21791144
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
崔 炯仁 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (90398397)
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Keywords | 産後うつ病 / 育児不安 / 虐待 / パーソナリティ障害 / ボンディング困難 / アンケート / 共分散構造分析 / 愛着 |
Research Abstract |
育児期女性262名を対象として子どもの月齢が7.0±3.2ヶ月、21.8±2.4ヶ月時に自記式調査票による調査を行った。2回のZSDS抑うつ得点に有意差は見られなかった。各尺度で測定した心理特徴により対象者を分類した上で抑うつの推移を比較した結果、STAIによる高不安特性群、PBIによる母親養護高得点群、BSIによる非ボーダーラインパーソナリティ傾向群で有意に抑うつが改善し、PBI母親養護低得点群では有意に悪化した。産後うつ(3~9ヶ月)は従来から不安特性の高さと関連するといわれるが、高い不安特性をもつ女性の産後うつは子の分離個体化期(18-24ヶ月)にかけて改善するという結果となった。一方幼少時の母からのケア体験が良好であれば子の分離個体化期にかけて抑うつが改善し、不良であれば抑うつが悪化するという結果からは、母親からのケアが十分でない女性は重要な対象との分離に際し見捨てられ抑うつを抱きやすい認知傾向を有しているという認知モデル、女性自身の母親イメージや、母に陰性感情を抱く自己イメージが子に投影され、子の分離への動きが自分への攻撃、陰性感情に基づいた行動と捉えられ見捨てられ抑うつを呈するという、力動モデルなどの背景の存在が推定された。これらの結果から乳児期の母親検診において母親の心理特徴を理解できればその後のうつの悪化などの推移をある程度推測できることができ、母子保健現場において有用な情報提供や対応を行うことができる。 これまでの調査研究結果を第40回日本女性心身医学会学術集会において『育児期女性における抑うつの推移とその影響因子に関する研究』として発表した。現在専門学術誌への投稿を準備している。また、これらの知見を含めて虐待、女性のうつについて分担執筆した書籍2点が出版された。対象者からの希望が多かったため、研究成果公表のためのウェブサイトを作成し、全参加者に郵送でその内容を告知した。
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Research Products
(4 results)