2011 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトール三キナーゼ遺伝子変異が乳癌薬物治療に及ぼす影響
Project/Area Number |
21791266
|
Research Institution | 国立病院機構四国がんセンター |
Principal Investigator |
原 文堅 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), 臨床研究センター, 医師 (00507717)
|
Keywords | 癌 / 遺伝子 / 医療福祉 / 臨床 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
PI3Kのcatalytic domain(PIK3CA)の遺伝子変異は細胞の癌化に関与し、下流のリン酸化活性を促進する恒常的活性化変異であることが知られている。乳癌においてもこの変異は10-40%と高率に見られる。 またPI3K-Akt経路は薬効耐性に関与するとされ、この経路を活性化するPIK3CAの遺伝子変異の存在は耐性機序の一因となっている可能性がある。我々はまず、ドセタキセル(DTX)の耐性機序解明のため、DTX単剤による乳癌術前化学療法を施行された57症例の治療開始前針生検パラフィン包埋標本を用いてPIK3CA遺伝子変異の測定を行った。ダイレクトシークエンス法にて遺伝子変異解析し、臨床病理因子、DTXの効果との関係を検討した。57例中8例(14.1%)にPIK3CA変異を認めた。内訳はExon9に5.3%、Exon20に8.8%であった。PIK3CA変異の有無と臨床病理因子はいずれも有意な相関は見られなかった。またDTXによる病理学的奏効割合および無増悪生存期間に関してもPIK3CA遺伝子変異の有無との間に有意な相関は認められなかった。 次にタモキシフェン(TAM)の耐性機序解明のため、補助療法でタモキシフェン投与のみがなされた132症例の術後凍結標本を用い、ダイレクトシークエンス法にて遺伝子変異解析し、臨床病理因子、生存期間の関係を検討した。結果は45/132(34.1%)例に変異が認められた。内訳はExon9が13.6%、Exon20が20.5%であった。遺伝子変異の有無と病理学的因子に有意な相関は認めなかった。TAM単独投与患者においてExon9 PIK3CA変異があると予後良好である傾向が見られたが有意差には至らなかった。 今回の検討によりPIK3CA遺伝子変異はDTX、TAMの耐性の原因とはならないことが示唆された。
|