2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子遺伝子導入による損傷後脊髄神経グリア系細胞の微小環境制御
Project/Area Number |
21791389
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
中嶋 秀明 University of Fukui, 医学部, 助教 (10397276)
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Keywords | 脊髄損傷 / 神経栄養因子 / 遺伝子導入 / apoptosis抑制 / 神経保護効果 / 神経再生 / 逆行性導入 |
Research Abstract |
脊髄損傷では、内因性神経栄養因子の欠乏による微小環境の変化が、ニューロンの細胞死・軸索変性・大部分の内因性神経幹細胞のアストロサイトへの分化誘導(グリア瘢痕組織形成)など、損傷を助長させ再生を困難にしている大きな要因の背景となっている。神経栄養因子を外因性に投与する手法として、本研究では、ラット頚髄圧挫損傷モデルに対し、損傷後胸骨乳突筋より、β-galactosidase, BDNFを組み込んだ非増殖型adenovirus vector (AdV-LacZ, -BDNF)100μlを注入した。controlとして椎弓切除のみを行った後にAdV-LacZを注入したratを用いた。胸骨乳突筋から逆行性に導入されたβ-galactosidaseは、controlでは灰白質のNeuN陽性細胞にのみ取り込まれており、白質への導入はみられなかった。頚髄圧挫損傷モデルでは、neuronのみならず、一部のoligodendrocyte, astrocyte, microgliaにも取り込まれていた。頚髄圧挫損傷モデルを用いた検討では、BDNF導入群では、LacZ注入群に比べ、TUNEL/NeuN, /RIP陽性細胞数の減少が、損傷後3日~1週以降で確認された。activated-caspase-3のwestern blottingでは、BDNF注入群では注入後1日目以降で有意にLacZ注入群より発現が低下しており、免疫染色ではactivated-caspase-3/NeuN, /RIP陽性細胞数がBDNF注入群で有意に低いことが確認された。またNG2の発現はBDNF注入群で有意に高かった。逆行性導入は軸索流を介したアプローチであり、直接導入は前角細胞のみと理論上は考えられるが、興味深いことに脊髄損傷の環境下ではグリア系細胞への直接的導入もみられた。逆行性導入では、neuronからautocrine、paracrine機構を介したtorophic effectsに加え、グリア系細胞によるtorophic effectsの助長の可能性も示唆され、neuronやoligodendrocyteのapoptosis抑制をひとつの機序として、神経保護効果、再生能力賦活化効果をもたらすと考えられた。
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Research Products
(6 results)