2009 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞増殖因子を主軸とした変形性関節症の発生、進行機序の解明
Project/Area Number |
21791426
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Research Institution | Clinical Research Center for Allergy and Rheumatology, National Hospital Organization, Sagamihara National Hospital |
Principal Investigator |
田中 こなぎ Clinical Research Center for Allergy and Rheumatology, National Hospital Organization, Sagamihara National Hospital, 病態総合研究部, 特別研究員 (00393025)
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Keywords | 変形性関節症 / 血管内皮細胞増殖因子 |
Research Abstract |
1. 研究初年度の本年は保存的な治療を受けている早期、進行期の膝関節の変形性関節症(OA)症例と手術的治療を受けた末期の膝OA症例から関節液を採取・解析したところ、OAにおいて関節軟骨変性の一因となっていると推察されるMMP-1,2,3濃度は関節液中のVEGF-Aの濃度と関連があり、これら3種のMMPの濃度が低い症例ではVEGF-Aの濃度も低い傾向があることが明らかになった。 2. OAでは歩行や立位での作業や運動など関節軟骨に対する力学的な負荷が症状の発現、増悪に関連する。このことを考慮して(1)剖検例において病的所見のない膝関節から採取した関節軟骨と(2)人工関節置換手術を受けた末期、進行期のOA膝関節において肉眼的に変性所見が明らかでない部位から採取した軟骨および(3)肉眼的な変性部からそれぞれ関節軟骨を採取して生理的な荷重量に相当する荷重を繰り返して放出されたタンパクの解析を行ったところ、VEGF-Aの放出量は(3)>(2)>>(1)の順であり、OA軟骨変性部から荷重によって多量のVEGF-Aが放出されること明らかになった。VEGF-Aは強力な血管透過性亢進作用を有する。このことからOAにおいて運動負荷後に急激に発生する関節水腫の原因の一部が荷重によって変性軟骨から放出されるVEGF-Aによるのではないかと考えられた。 3. OA関節においてVEGF-Aのもつ意義を知るためにVEGF-Aを発現するアデノウイルスを構築し、これをマウス膝関節に投与したところ、lacZを発現する対照ウイルスに対してVEGF-A発現ウイルス軟骨を投与した膝関節では軟骨の変性、骨棘の形成がともに若干促進される傾向が見られた。しかし対照ウイルスを投与した膝関節でも軟骨変性が誘導されており、アデノウイルスを投与したこと自体の影響も考慮する必要があるため、この結果に関しては慎重な解釈が必要に思われた。
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