2010 Fiscal Year Annual Research Report
全身麻酔薬が出血性ショック時および虚血再灌流時の糖代謝に及ぼす影響
Project/Area Number |
21791437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 享之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50302609)
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Keywords | 糖代謝 / 全身麻酔 / 嫌気的代謝 / 出血性ショック / 虚血再灌流 |
Research Abstract |
平成22年度前半は、セボフルランとプロポフォールが出血性ショック時の糖代謝に及ぼす影響を引き続き検討した。セボフルラン麻酔下ではプロポフォール麻酔下と比較して、血糖値は有意に高値でありインスリン分泌量は有意に低かった。セボフルラン麻酔下とプロポフォール麻酔下の両条件において、KATPチャンネル阻害薬(グリベンクラミド)前処置は、血糖値を有意に低下させインスジン分泌を有意に増加させた。セボフルラン麻酔下とプロポフォール麻酔下の両条件において、KATPチャンネル開口薬(ニコランジル)前処置は糖代謝に有意な影響を及ぼさなかったが、プロポフォール麻酔下において出血性ショックに伴う心筋虚血の発生率を有意に低下させた。文献的には、セボフルランはKATPチャンネルを開口し、プロポフォールはKATPチャンネルを阻害すると報告されている。本研究結果は、セボフルランは膵β細胞KATPチャンネルを開口しインスリン分泌を抑制するのに対し、プロポフォールは膵β細胞KATPチャンネルを阻害しインスリン分泌を促進させることを示唆する。ただし、本研究で用いた用量では、プロポフォールのKATPチャンネルに対する影響は完全阻害ではなく部分的阻害であると考えられる。平成22年度後半は、セボフルランとプロポフォールが虚血再灌流時の糖代謝に及ぼす影響の検討を開始した。現段階では統計学的検討に必要なデータ数に満たないが、虚血再灌流時の糖代謝にセボフルランとプロポフォールが及ぼす影響は大きく異なる可能性が示唆されている。
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