2011 Fiscal Year Annual Research Report
全身麻酔薬が出血性ショック時および虚血再灌流時の糖代謝に及ぼす影響
Project/Area Number |
21791437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 享之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50302609)
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Keywords | 糖代謝 / 全身麻酔 / 嫌気的代謝 / 出血性ショック / 虚血再灌流 |
Research Abstract |
セボフルラン麻酔下に気管挿管・人工呼吸・動静脈路確保を行った後に、セボフルランによる麻酔維持を継続したラットとプロポフォールによる麻酔維持に変更したラットに群分けし、開腹手術を行って腹部大動脈遠位端を確保し、10分間の大動脈遮断の後に、再灌流を行った。大動脈遮断前の時点(好気的代謝条件下)において、セボフルラン麻酔群と比較してプロポフォール麻酔群では血糖値が有意に低く、血漿インスリン濃度が有意に高く、インスリン感受性の指標であるインスリン/ブドウ糖比が有意に高く、血漿TNF-α濃度が有意に高かったことから、プロポフォール麻酔はインスリン抵抗性を伴う高インスリン血症を惹起し、そのインスリン抵抗性にはTNF-αが関与していることが示唆された。セボフルラン麻酔下では虚血再灌流により血糖値には有意な変化が認められなかったが、インスリン分泌は再灌流直後に減少するが回復に転じ、インスリン感受性は再灌流直後に亢進するものの元のレベルに復し、経過中TNF-αはすべてのラットの血液中で検出できなかった。プロポフォール麻酔下でも虚血再灌流により血糖値には有意な変化が認められなかったが、インスリン分泌は再灌流直後に増加するが、減少に転じ、インスリン感受性は再灌流直後に低下するが回復傾向に転じ、虚血前には血液中に高濃度で検出されたTNF-αは、再灌流後に減少してほとんどのラットで検出できなくなり、虚血再灌流に伴うインスリン感受性の変化と血漿TNF-α濃度の間に相関関係を認めた。以上により、セボフルランとプロポフォールが虚血再灌流時の糖代謝に及ぼす影響には大きな差があり、インスリン分泌・感受性の両方が関与していることが示唆された。本研究により、虚血再灌流を伴う手術の生体管理において、生体内エネルギー需給バランス維持および虚血再灌流障害防止を図る上での、代謝管理に関する重要な情報提供が可能になったと考える。
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