2010 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎球菌表面抗原の解析と肺炎球菌の上気道粘膜定着阻止ワクチンの開発
Project/Area Number |
21791639
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
酒井 章博 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50423950)
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Keywords | 肺炎球菌 / PspA / ワクチン / 急性中耳炎 / 急性副鼻腔炎 |
Research Abstract |
肺炎球菌表面蛋白抗原であるPspAは肺炎球菌全株に存在し、免疫原性を有しており、次世代のワクチン標的抗原として有望である。PspAにはfamily1、family2、family3が存在する。本研究の目的は急性中耳炎患児より分離された肺炎球菌のPspA familyの割合をPCR法にて解析し、さらに遺伝子組み換えPspAを作成しマウスモデルを用いて肺炎球菌感染予防の効果を検討することである。 研究成果:急性中耳炎患児より分離した肺炎球菌110株のうち、43.8%がfamily1、51.0%がfamily2であり、肺炎球菌臨床分離株のほとんどがPspA family1またはfamily2に属することが分かった。次に肺炎球菌株より、PspA遺伝子をクローニングし、遺伝子組み換え蛋白を作製した。PspA経鼻免疫による肺炎球菌感染症の予防効果を検討した。成熟したメスマウスにPspAを用いて経鼻免疫を行った後、仔マウスを作成し、肺炎球菌を経鼻接種した。仔マウスの鼻腔洗浄液中の肺炎球菌数はコントロールと比較して有意な変化を認めなかったが、鼻粘膜組織中の肺炎球菌数はコントロールと比較して有意な減少を認めた。PspAを経鼻免疫することで成熟したマウスの血清および母乳中に抗PspA特異的抗体が誘導され、仔マウスの鼻咽腔における肺炎球菌感染が予防された。急性中耳炎患児から分離された肺炎球菌の約95%がfamily1またはfamily2であった。PspA family1とfamily2は免疫原性において交差反応を示すことが判明しており、PspA family1、family2のいずれかまたは両方で免疫を行うことでほとんどの肺炎球菌に対する免疫応答を賦活できる可能性があり、今後のワクチン開発において重要な抗原であることが示された。
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