2009 Fiscal Year Annual Research Report
扁桃リンパ球産生の糖鎖不全IgA1と糸球体沈着メカニズムの解明
Project/Area Number |
21791640
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 昭彦 Kitasato University, 医学部, 講師 (10317026)
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Keywords | IgA腎症 / 扁桃 / κカゼイン / ジャカリン / HAA / ヒンジ / ガラクトース欠損 / 糖鎖 |
Research Abstract |
IgA腎症は腎糸球体にIgA1が選択的に沈着する疾患であり、この選択的沈着からIgA1の構造異常がIgA腎症の発症に関わっていると考えられてきている。また、我々は以前、IgA腎症患者の扁桃中には抗κカゼイン抗体が過剰産生していることを報告した。また、κカゼインカラムで分離した扁桃のIgA1は糖鎖異常を認めることも分かった。今回、血清から得られた抗κカゼインIgA1抗体のヒンジ部糖鎖を質量分析装置を用いて分析した。酸処理血清をκカゼインカラムに流し、結合分画(KB)と非結合分画(KP)に分離した。 さらにジャカリンカラムを用いてKBとKPをそれぞれ分離し、ジャカリンに結合しないものをKPJBと結合するものをKBJBとに分離した。KPJBとKBJBの異常IgA1の相対量をガラクトース欠損のIgA1に結合する性質をもつレクチンであるHAAを用いてELISA法で検出した。すると、異常IgA1/総IgA1はKPJBよりKBJBで高値を示した。プール血清50mlからKBJBとして約3mgのIgA1が得られた。KPJBとKBJBから得られ精製されたヒンジ糖鎖の解析にはイオントラップ型質量分析装置で行った。 糖鎖のピークはx:y:zで表され、それぞれGa1NAc、Ga1、Neu5Acを示している。全部で22種のヒンジ部糖鎖がKPJBとKBJBから同定された。そのうち7種の糖鎖はどちらの分画にも共通していたが、8種がKPJBのみに、7種がKBJBのみに認められた。これらのことからκカゼインに結合するIgA1抗体はやはり糖鎖にも異常があり、IgA腎症の発症に何らかの影響を与えていることが示唆される。今後も、これら糖鎖の役割が明確に解明できればIgA腎症のメカニズムの解明に寄与できると考えられる。
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