2010 Fiscal Year Annual Research Report
蝸牛虚血再潅流時における内リンパカルシウムイオンの役割
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21791653
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
森 京子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (40368105)
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Keywords | 耳科学 / 内耳電気生理 / 蝸牛内直流電位 / 蝸牛管抵抗 / 細胞内カルシウム / イオンチャネル / 低酸素負荷 |
Research Abstract |
本研究は、虚血再灌流時における細胞内Ca^<2+>の得割りを検討することを目的とし、実験を行った。これまでの研究成果から、無呼吸負荷などの低酸素時には内リンパ直流電位(EP)の著明な低下が観察されるが、内リンパ腔に膜透過性Ca^<2+>キレート剤やL型Ca^<2+>チャネル阻害剤を投与すると、無呼吸負荷によるEPの低下が著明に抑制されることを判明している。また、EPを発生すると考えられる血管条では、辺縁細胞にL型Ca^<2+>チャネルの著明な局在が確認されている。以上の事実は、辺縁細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が無呼吸負荷によるEP低下の一因であることを示している。これをふまえ本年度の実験では白色モルモットを用い、内リンパ腔へEP測定用ガラス微小電極と、通電兼内リンパ潅流用ガラス微小電極を刺入し、EPおよび蝸牛管抵抗の同時測定を行った。無呼吸負荷5分後では、EPの低下に伴い蝸牛管抵抗が上昇することが判明した。次に、電依存性K^+チャネル阻害剤(tetraethylammonium)およびTRPチャネル阻害剤(Gd^<3+>およびLa^<3+>)を内リンパ腔に投与しても、対照条件と同様に無呼吸負荷によるEP低下に伴う蝸牛管抵抗の上昇が観察された。しかし、L型Ca^<2+>チャネル活性化剤である(S)-BAY K8644を内リンパ腔に投与しEPおよび蝸牛管抵抗の変化を観察したところ、辺縁細胞内Ca^<2+>濃度上昇によりEPは低下するにもかかわらず蝸牛管抵抗が低下し、無呼吸負荷を行うとさらなるEP低下とともにCoPRの上昇が観察された。このことは、無呼吸負荷時には細胞内Ca^<2+>濃度上昇に伴うイオンチャネルの閉鎖とは異なる機序により、蝸牛管抵抗が上昇することを示している。したがって、血流障害時には細胞内Ca^<2+>濃度上昇を防ぐのみならず、高圧酸素療法などの酸素負荷を行う必要があるものと考えられた。
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