2009 Fiscal Year Annual Research Report
敗血症におけるγグロブリン大量療法の有効性に関する検討
Project/Area Number |
21791776
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉川 貴久 Keio University, 医学部, 助教 (80445220)
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Keywords | 救急治療医学 |
Research Abstract |
欧米ではガンマグロブリン療法は主にウィルス感染症などに対して用いられるlow-dose therapyとITPなどに対して用いられるhigh-dose therapyの2種類に分けられる.現在本邦で重症敗血症に対し認められている用量は海外におけるlow-dose therapyの用量に相当する.近年ガンマグロブリン製剤のhigh-dose therapyの持つ強力な抗炎症作用が敗血症に対しても有効である可能性が注目されているが,その効果に関していまだ一定の見解は得られていない.今回,我々はラットの盲腸結紮穿刺モデルを用いて高用量ガンマグロブリン製剤の有効性について検討した.術前にガンマグロブリン製剤をそれぞれ1500mg(高用量群),300mg(低用量群)あるいは等量の生理食塩水(コントロール群)を投与し生存率,HMGB1を含むサイトカイン値,各種臓器機能,肺組織像について検討した.術後7日目の生存率は高用量群では73%でありコントロール群33%に比べて有意に改善したが(p=0.037),低用量群では生存率の改善は認めなかった.低用量群やコントロール群では術後4時間における血清HMGB 1値が高値を示したが,高容量群では有意にその上昇が抑制されていた(p<0.05).また,高用量群では術後8時間におけるクレアチニンやBUNの上昇が他の2群に比し,有意に軽度であった(p<0.05).肺組織像の検討に関しては,コントロール群でみられた高度な肺の炎症性変化がガンマグロブリン投与群では軽微であった.高用量ガンマグロブリン製剤はラット敗血症モデルの生存率を有意に改善した.この生存率の改善は低用量群では認められないものであった.また,その機序として血清HMGB1値の抑制が関与していることが示唆された.
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