2010 Fiscal Year Annual Research Report
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21791900
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉川 峰加 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00444688)
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Keywords | 嚥下 / 咬合 / 高齢者 / 舌圧 / 歯科補綴 |
Research Abstract |
本年度は広島大学病院ならびに某療養型医療施設にて得られたVF/VEデータを用い研究を実施した. ●目的 PAPによる口腔容積の変化が摂食嚥下機能に及ぼす影響の検討 ●方法 高齢脳神経疾患患者(A群,無歯顎・女性3名,年齢71-83歳)および高齢頭頚部ガン・外傷患者(B群,下顎亜全摘手術後・咬合支持なし)3名(女性3名,年齢69-78歳)とし,いずれの被験者も義歯や口腔内装置を長期にわたり装着していなかった者とした.3ケ月以上にわたる嚥下間接・直接訓練の後,舌接触補助装置(PAP)付義歯を作製し装着1カ月後にVFまたはVE検査を実施した.その嚥下動態を口腔通過時間(OTT),咽頭通過時間(PTT)ならびに口腔・咽頭残留量(OR,PR)で定量的に評価し,嚥下効率を示すOPSEで総合評価を行った.各被験者によって摂食嚥下機能のレベルが異なるため,同一被験者内で比較する食品は同量の液体またはゼリーで統一を図った. ●結果 PAP付義歯の装着により舌尖アンカー機能やスムーズな舌搾送運動の改善が認められた.A群の1名で咀嚼能の再開によりOTTが延長したが,その他の被験者でOTTとPTTの短縮を認めた.またORでは5-15%,PRでは1-5%と改善し,OPSEでは7-82%の改善を認めた. ●考察 咬合支持の喪失に加えて基礎疾患により口腔機能低下が認められた被験者にPAP付義歯を装着し口腔内容積をコントロールすることで,口腔・咽頭期嚥下障害の改善に貢献できることが明らかとなった.これまでは口腔ガン手術後の患者へのPAP適応であったが,今回慢性期の脳神経・神経進行性疾患の患者でもPAPが奏功することが判明した.一方で,義歯を長期に装着していなかったため,口輪筋や頬筋の緊張・舌の巨大化等からまずは口腔のリラクセーションを必要とした者や,装置になじめず装着を断念した者もいた.患者をとりまく多職種医療従事者たちは,今後も増加する摂食嚥下障害患者に対し,歯の欠損やそれに伴って生じる口腔内の形態的・機能的変化によって口腔容積の変化が起こり,それが嚥下機能にも影響を及ぼすことに留意すべきである.
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Research Products
(5 results)