2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒーリングシートと咀嚼・咬合等の開閉口運動を利用した骨延長法の開発
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21792019
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
米澤 久信 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (80423680)
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Keywords | 骨延延長法 / 創傷治癒 / 口腔再建 / 骨形成 / 生体材料 / 開閉口運動 |
Research Abstract |
本年度では前年度の研究結果を踏まえた上で、ヒーリングシートに関し実験動物を用いた検討を引き続き施行した。実験動物は、ウサギ(日本白色種)を用い初めに骨組織が介在しない軟組織のみに対する創傷治癒効果について検討した。 実験方法は、体重約3-3.5kgの雄性日本白色家兎を用い全身麻酔下で舌縁部に大きさ約10×10×2mmの切除を施行した。その後切除後の創部に対しフィブリンとトロンビンの混合溶液とポリグリコール酸シートを使用した群と一次縫縮を施行した群に分け、術後1週、2週、4週においてH-E染色、抗Cytokeratin AE1/AE3(以下AE1/AE3)、抗FGF-2抗体(以下FGF-2)ならびに抗VEGF抗体(以下VEGF)の免疫組織化学染色による形態学的観察ならびに肉眼的観察を行った。 結果は、フィブリンとトロンビンの混合溶液とポリグリコール酸シートを使用した群と一次縫縮を施行した群では術後1週、上皮全体でAE1/AE3に強陽性を示し、上皮層と結合組織層でFGF-2に強陽性を示し、VEGFの発現により血管新生が認められた。術後2週では、基底膜層の形成がさらに進みAE1/AE3に陽性を示したが、上皮層とその直下の結合組織層ではFGF-2の発現がやや減少した。術後4週では創面の組織修復が更に進み、上皮基底層においてAE1/AE3に陽性を示し、FGF-2、VEGFで陰性を示したことで正常に上皮化されたことが示唆された。一方、一次縫縮を施行した群では、術後1週で同様に上皮層にAE1/AE3に強陽性を示し、結合組織層でFGF-2とVEGFに陽性を示した。また、術後2週ではAE1/AE3では上皮層に発現を認め、FGF-2における陽性発現が減少し、術後4週でFGF-2に陰性を示し瘢痕形成を認めた。これらの結果より、フィブリンとトロンビンの混合溶液とポリグリコール酸シートを創傷治癒材として有用であり、少なくとも軟組織の治癒効果があることが示された。骨延長時における骨膜治癒の促進を含めた効果を今後さらに検討する必要がある。
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