2009 Fiscal Year Annual Research Report
形状記憶バイオプラスチックを使用した矯正治療への基礎研究
Project/Area Number |
21792049
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 聡 Hokkaido University, 大学病院, 医員 (90443960)
|
Keywords | 形状記憶バイオプラスチック / 歯科矯正治療 / 形状記憶性 |
Research Abstract |
形状記憶性を有するプラスチック材料が歯科矯正治療に用いるワイヤーおよび床材料に代替する可能性を検討するためにプラスチック材料の物性を計測した。現在、歯科矯正治療で汎用されている床装置と呼ばれる器具の材料はポリカーボネートであるが、水温37度における3点曲げ試験の結果、この形状記憶バイオプラスチックはポリカーボネート製とほぼ同等の弾性率を有することが分かった。一方、水温60度における3点曲げ試験ではポリカーボネート及び形状記憶バイオプラスチックのどちらも弾性率が小さくなったが、形状記憶バイオプラスチックの弾性率の方が大きく低下した。次に日本電気株式会社が開発した新しい形状記憶プラスチックを80度に熱し軟化させた後、0度に急冷したところ、すぐには硬化せず数分間ほど軟らかい状態が続いた。このヒステリシス時間を長く取れる性質により、熱くない状態で安全に任意の形態を付与することができるようになる。このことにより従来石膏模型を用いて加熱加圧成形で行っていた床装置の作製が常温でできるようになる。また化学重合レジンを使用せず口腔内装置の調整や作製することが容易になる。これらのことを実用化するためには、様々な厚みのシート状にする必要がある。一般的なポリカーボネートの融点が約250度であるのに対して、この形状記憶プラスチックの融点は150度で、比較的低い温度で流し込むことができる。この融点が低いこと、ならびにヒステリシス時間が長いことは歯科矯正治療に使用するあたらな床材料として非常に有用であると言える。現時点での問題点である色や弾性率を検討する事で更なる展開が期待できると考える。
|