Research Abstract |
本研究目的は、「エビデンスに基づいた摂食・嚥下訓練法」のための基礎的資料を得ることであった。この目的に従って,口腔粘膜上皮の形態を光学顕微鏡・走査電子顕微鏡を用いて検索した。まず,既存資料で立てた仮説の検証と例数の増加を図るため,新規標本を蓄積した。記録作業としては,血管や神経起始部の位置・本数・痕跡枝の有無の確認,剖出図描画,写真撮影を行った。併せて,概存標本全体の再検査も行った。また,並行して,保管している標本を用いて筋群,神経を剖出し,実体顕微鏡により支配神経の走行や栄養血管の分布状態,周囲組織との関係を観察した。次に,各筋群の固定をおこない試料を作成した。神経と血管との関係を明らかにするために,既存,新規を併せた摘出標本の動脈に,着色樹脂を注入し、頭側を結紮して,動脈の太さに応じた注射針を使って手圧で注入を行い,血栓等で滞る場合は,遠位に注射針を刺入する作業を繰り返した。標本の固定状態や血管壁の脆さによっては,着色ゼラチン溶液やラテックスゴムの方が良好な結果が得られた。この動脈注入によって,静脈やリンパ管との区別がつきやすくなった。最終的に,神経と剖出した動脈,周囲の静脈を含む軟組織との関係を詳細に解剖図として記録した。これにより進入部位,位置関係,直腸周辺での動脈,他の動脈との吻合関係など,従来とは異なる視点で観察にあたることが出来るようになった。これらの結果より、「開口反射誘発法としてのK-point刺激法のエビデンス」が大まかに把握出来た。開口運動を繰り返せば,筋力の回復という面だけでなく,P腔内の衛生ケアにとっても利点となる。また,K-point刺激による開口反射の後には,咀嚼用運動と嚥下が引き続いて起こるという。このK-point刺激法を効果的に行えば,仮性球麻痺患者の摂食・嚥下機能の回復につなげることが大いに期待できる。
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