Research Abstract |
本研究では,(1)小児がん経験者が病気体験や社会生活の中で獲得する"積極的で前向きな適応(ポジティブ)"とその形成過程を明らかにし,(2)そのポジティブを身につけるための介入プログラムについて検討することを目的としている。 小児がん経験者のもっポジティブな部分を明らかにするため,小児がん経験者の心理的側面に関する国内外の文献を精読し,面接内容,質問紙の内容を再度検討した。その結果,当初の予定通り,Fredricksonの「拡張-形成理論」をもとに,小児がん経験者が前向きに適応していく過程を聞き取ることができる質問内容を設け,調査実施の準備をすすめた。次に,対象者は病気の告知を受け治療を終了している成人を対象とし,近域のがんの子どもを守る会支部に研究の目的と趣旨を説明した。10名の小児がん経験者から研究協力の同意を得ることができた。順次日程を調整し,質問紙調査,面接調査の順に進め,逐次データを整理していった。10名の対象者は年齢20~32歳(平均25.1歳),性別は男性3名,女性7名,病名は急性リンパ性白血病,急性骨髄性白血病,脳腫瘍等であった。自分の病気に関する相談相手は,小児がん経験者,医師,両親の順に多く,日常生活の相談相手は両親,友人,小児がん経験者の順であった。 面接調査は,病気体験によるポジティブ・ネガティブな状況,病気体験による思考や行動の拡がり,同じ病気体験をした人との活動について聞き取りをすすめた。同じ病気体験をした人の存在に気付き,そうした対象との関わりの中でネガティブな感情からポジティブな感情へと変化している傾向にあった。次年度もデータ収集,分析を進め,小児がん経験者がポジティブな特性を獲得するための介入試案について検討していく予定である。
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