2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21792276
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
今村 美代子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助教 (20511158)
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Keywords | 死産 / 父親 / 周産期死亡 / 次子妊娠 |
Research Abstract |
子どもの誕生を待ち望んでいる夫婦や家族にとって、子どもを亡くすという体験は、精神状態と身体的回復に多くのエネルギーを要する喪失体験となる。しかしながら、我が国における周産期喪失に関する研究は、近年ようやく取り組まれ始めた分野であり、海外と比較すると30年程の遅れをとっている。そして、そのケア介入への視点は母親のみに向けられがちである。また、喪失を体験した後の妊娠は、夫婦にとって一概に喜びに満ちたものとは言えない。海外では父親も子どもの喪失体験の衝撃によってその後の妊娠において精神的ストレスが増加することが報告されている。よって本研究の目的は、死産で子どもを亡くした父親が次の妊娠を知り、その出産を迎え入れる時期までに、どのような体験をしてきたのかという語りを記述することであり、それを通して死産で子どもを亡くした父親へのケアの示唆を得ることである。 <対象と方法>死産により子どもを亡くし、その後に子どもを授かった3名の父親を対象に半構成的面接を行い、得られたデータを質的記述的に分析した。<結果および考察>父親達の体験は以下のようなものであった。1.片時も忘れず妻子を案じる、2.強くあろうと振る舞う、3.次子を育てる中に後悔を抱く、4.目に見えぬ我が子と歩み続ける。 死産後に子を授かった父親達は、妻の妊娠経過中がいかに不安あったかを克明に語った。父親達は妻子を案じる中にも、上の子の世話、家事、仕事に向けて自らを忙しく動かし、自身の不安と向き合わないようにしていた。その不安は、子どもの誕生を見守るまで軽減することはなく、胸に押し隠されていた。次子を育てる中、亡き子には何もしてやれなかったという後悔を抱きながらも、子どもが残してくれた意味を引き継ごうと歩んでいた。 死産を経験した父親は、不安の渦中に在りながらも、妻と子の身を案じる生活を続けていた。しかしながら、全員が他者に相談を求めなかったと答え、強くあろうと振る舞っていたことから、男性の苦悩はさらに複雑化されることが示唆された。父親は妊娠・出産の主体となり得ないことから、ケア介入が困難であることは明らかであるが、彼らが隠し抱く苦悩を踏まえ、死産直後から夫婦を継続的にサポートする体制作りが求められているのである。
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