Research Abstract |
目的:スピリチュアリティは,人間の尊厳やQuality of lifeを考える上で不可欠の概念であるが,日本におけるスピリチュアリティに関する研究の多くは,がんの終末期ケア領域におけるものであり,高齢者に着目した研究は少ない。そこで本研究は,80歳以上の後期高齢者のスピリチュアリティとSubjective well-beingおよび精神神経内分泌免疫学系との関連を検討することを目的とした。 対象:沖縄県西原町の80歳以上高齢者48名(男性18名,女性30名)について,平成21年9月から平成22年2月に訪問面接調査を実施した。調査は半構成的面接により,基本属性や竹田らのスピリチュアリティ健康尺度,WHOのSubjective Well-Being Inventory(以下SUBI)などの評価指標を使用した。また,精神神経内分泌免疫学系との関連を検討するため,唾液採取を行った。分析は,スピリチュアリティ尺度得点を中央値で低群(25名,SP低群),高群(23名,SP高群)に分け,χ2検定およびMann-Whitney U検定を行った。解析にはSPSS17.0Jを使用し,有意水準は5%未満とした。 結果:基本属性との関連では,平均年齢はSP低群に比べSP高群で有意に高く,家族構成ではSP高群で独居者の占める割合が高かった。SUBIとの関連では,「心の健康度」およびSUBI下位領域の「人生への前向きの気持ち」,「達成感」,「至福感」,「社会的な支え」でいずれもSP高群で有意に高かった。伝統的行事に参加しない者の割合は,SP高群で有意に高かった。 結論:本研究結果から,加齢や独居者,伝統的行事に参加しない者でスピリチュアリティも高かったことから,スピリチュアリティは孤独や寂寥感など老いのプロセスに伴う心理社会的受容に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。さらに,スピリチュアリティは高齢者個々の精神生活全般に影響し,生きる目的や意味,活力,社会的紐帯といった自己の内面性に深く関与する可能性が示唆された。なお,精神神経内分泌免疫学系との関連については,現在唾液の分析中のため今後検討する予定である。
|