Research Abstract |
加齢に伴う筋力と運動速度の低下に対して,筋力および筋力を瞬発的に発揮する能力の向上を目的としたトレーニングが推奨されている.しかし,アルツハイマー病患者の場合,瞬発的な筋力測定の再現性や筋力が日常生活動作に及ぼす影響ついては明らかではなく,対象者の筋力レベルに応じたトレーニングを立案することが難しいのが現状である.本研究ではアルツハイマー病を有する高齢患者における筋力(maximum voluntary force : F max)および筋力を瞬発的に発揮する能力(rate of force development : RFD)の測定における再現性(実験1)および日常生活動作に必要な筋力閾値(実験2)を明らかにすることを目的とした. 実験1の結果,RFDに関する日内および日間のICCは,両群ともに高値だった(アルツハイマー病患者ICC 0.99-1.00,健常者ICC 0.81-0.96).同様に,Fmaxに関する日内および日間のICCについても両群ともに高値だった(アルツハイマー病患者ICC 0.95-1.00,健常者ICC 0.83-0.97).実験2の結果,膝伸展筋力体重比は有意に下衣更衣,トイレ動作,移乗,歩行の可否に影響していた(オッズ比:下衣更衣109.90,トイレ動作18.29,移乗39.70,歩行12.77).また,下衣更衣とトイレ動作は0.8Nm/kg(下衣更衣:陽性的中率0.74,陰性適中率0.77;トイレ動作:陽性的中率0.70,陰性適中率0.71),移乗は1.2Nm/kg(陽性的中率0.83,陰性適中率0.71),歩行は0.6Nm/kg(陽性的中率0.71,陰性適中率0.70)を閾値とした場合に最も判別精度が高かった. 本研究では,高齢アルツハイマー病患者における筋力測定の再現性および日常生活動作に必要な筋力閾値を明らかにすることに成功した.
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