2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820019
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
奥村 真紀 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70515098)
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Keywords | 英文学 / ヴィクトリア朝小説 / 翻案劇 / 舞台化 / 映像化 / メロドラマ |
Research Abstract |
本研究は、現代の批評動向をふまえた上で、ブロンテ姉妹の作品の文化史・社会史的位置づけを再検証するために、個々の小説の何がどのように、さまざまな文化の中で受容されてきたかを明らかにすることを目的とする。ブロンテ姉妹の名は英文学の主流に組み込まれ、純文学史上に確固たる地位を築いているが、その作品は同時にローカルチャーとして、大衆的な舞台や映像というメディアによって、絶えることなく文化的に再生産されつづけてきた。小説作品の意味を逆説的に社会・文化的文脈から検証することが本研究の目標であり、平成22年度は、平成21年度に行った20世紀の翻案舞台であるヘレン・ジェロームの『ジェイン・エア』とメロドラマとの関係性についての研究をまとめ、日本ブロンテ協会の機関誌に発表した。また6月には、20世紀から21世紀にかけての『嵐が丘』の映像化について、日本ブロンテ協会主催の講演会で招待講演を行った。講演では1939年、1992年、2009年の3本の映像化を取り上げ、『嵐が丘』という小説の中に奇妙に欠落している大自然やムーアがいかに映像では重要視され、効果的に視覚化されているかについて、原作との比較とともに考察した。それによって、作品中の大自然の不在こそが『嵐が丘』という小説の魅力であり、エミリ・ブロンテの神格化に貢献してきたことを論証した。また、『嵐が丘』の作品論についても映像化から得た視点を元に日本ブロンテ協会関西支部大会で研究発表を行い、考察を深めた。その研究を進め、『嵐が丘』の映像化についての論文を、平成23年中に出版される論文集の中で発表する予定である。このように異なる時代や文化の中で、いかにブロンテ姉妹の作品が受容されてきたかを考察することによって、単なる作品研究を超え、作品に文化史的意味が生成される仕組みを解き明かし、作品を文化的受容史という展望の中で捉え直す試みを行った。
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Research Products
(7 results)