2010 Fiscal Year Annual Research Report
「凡庸な英雄」の誕生:18世紀フランスにおける英雄・ヒロイズムの概念の転換
Project/Area Number |
21820047
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
折方 のぞみ 明治大学, 経営学部, 専任講師 (10548829)
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Keywords | 啓蒙思想 / 百科全書 / リベルティナージュ / 18世紀フランス / ジャン=ジャック・ルソー / 英雄・ヒロイズム / 自然と人為 / 個人と共同体 |
Research Abstract |
本研究では、17世紀的な「孤高の偉人」としての英雄像が、18世紀的な「共同体の一員」としての英雄像へと変化していく過程を調査した。平成22年度は、18世紀における17世紀的な英雄像の受容について、当時の小説や演劇、そして書簡における記述の変遷の調査を通して検証した。そして、「凡人的英雄」というルソーの独創的視点が生み出した発想が、18世紀後半のフランスで生き延びる背景には、同時代の思想的状況が、ルソー的な意味でのヒロイズム論を受容する準備を整えつつあったことが大きいという仮説の論証を試みた。また、夏期休暇を利用して渡仏し、フランス国立図書館や国立古文書資料館などにて資料収集を行った。渡仏の成果として、現地でしか入手できない当時の書簡や手稿、国家機関が発行した様々な文書といった貴重資料を閲覧・収集することが出来、数名の現地の同僚研究者との面会も実現した。帰国後は、今年度の研究成果の一部として、2本の論文を執筆した。そのうち1本は、申請書の中で「本研究の抱える課題」のひとつとしてあげていた「女性のヒロイズムの可能性」を探るという視点から、ルソーと同時代のリベルタン作家の作品を複数取り上げて分析を試みており、今後につながる研究成果をあげることが出来た。諸事情から平成22年度中の学会発表は叶わなかったが、平成23年度夏に国際18世紀学会(開催地はオーストリア・グラーツ)に発表者として出席予定である。現地では今回の研究成果と1して、「例外的凡人性」としての英雄性を育てるルソーの教育システムについての発表を行うことになっている。平成22年度は、「英雄」概念の神話化と脱神話化のプロセスを丁寧にたどることで、個々の国家の構成員をいかにして「政治的存在」へと導くのかといった課題に対する18世紀からの一定の「解答」を得ることが出来たと考える。
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Research Products
(2 results)