2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアル・モーリシャス共和国における英語とクレオール語の共生に関わる研究
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21820056
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
ソジエ内田 恵美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00350405)
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Keywords | 言語政策 / 英語教育 / マルチリンガリズム / ポストコロニアル / クレオール / イマージョン / アイデンティティ / モーリシャス |
Research Abstract |
モーリシャス共和国において、社会的特徴が異なる中学校六校の生徒562名と教員45名にアンケート・インタヴューを行い、(A)祖先の言語(B)本人がさまざまな社会状況で話す言語、(C)教授言語と満足度、(D)クレオール語を教授言語とする制度に対する意見、(E)英・仏・クレオール・祖先の言語に対するイメージ、などを調査した結果の要旨を以下に記述する。 (A)祖先の言語で多い順は、クレオール、仏語、英語、ボジュプリ、ヒンディー、ウルドゥー。 (B)参加者は全員多言語話者であり、典型的な例として、家族や友達とはクレオール、学校の教員とは英語・仏語、宗教儀式はヒンディー、アラビア語、仏語、Eメールでは英語・クレオールと、使い分けることが多い。 (C)学校で使用される教授言語は、英語のみが一番多く、英語・仏語・クレオールの混合型が続いた。都市校よりも田舎校の教員はクレオールを含む多言語を使用し、生徒の満足度も高い。 (D)クレオールに対する態度にも都市・田舎での差異がみられ、田舎校ではクレオールにより好意的な意見が多い。田舎校では、クレオールは指導言語として使用されるべきと考え、またクレオールの綴りが標準化されるべきと考える生徒の割合が高い。 (E)言語に対するイメージとしては、英語・仏語は概ね、社会・経済的成功をもたらす権威ある国際語として認識されており、歴史上植民宗主国から強制された言語との見方はほとんどない。祖先の言語は年配者や祖先の文化への尊敬の念を示すものとして捉えられるが、実用的でないとの意見も顕著である。クレオールはモーリシャス人としてのアイデンティティを形成すると考えられるが、学習意義に対する意見は多岐に渡る。
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