2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランス近現代思想における身体論(愛・性・家族から見たその展開)
Project/Area Number |
21820074
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
藤田 尚志 九州産業大学, 国際文化学部, 講師 (80552207)
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Keywords | フランス哲学 / 愛 / 性 / 家族 / 制度 / 身体 / 結婚 / 宗教 |
Research Abstract |
「身体」を規定しているものとしての、愛・性・家族について、フランス近現代の思想の中から広くさまざまな問題点を洗い出そうと試みるうち、本年はより制度的な側面への関心が高まり、一つはそのような「身体」についての言説を生産する場としての「哲学的制度」すなわち「大学」を含む高等教育機関の分析という形に、もう一つは「身体性」が具体的に顕現する場としての「宗教」の分析という形に結実した。今年度前半のほとんどの業績が、言ってみれば認識論的な準備作業を形成している。 他方で、事柄それ自身としての「愛・性・家族の結節点としての身体論」は、その最も日常的な顕現の場としての「結婚」を例に、幾つかの学会発表(招待講演)に結実している。すなわち、「結婚の形而上学とその脱構築」と題して行なわれた三つの発表がそれである。2010年11月17日(水)に大阪・大阪大学・吹田キャンパスで行なわれた発表では、「結婚」概念の歴史を短く振り返った後、ドゥルーズの『アンチ・オイディプス』を取り上げ、彼による「家族主義」の批判が必ずしも「家族」概念の全否定を意味しないことを確認した。2010年11月20日(土)には福岡・九州日仏学館にて、日本人研究者1名、フランス人研究者2名を招いて、国際シンポジウムを開催し、それぞれにレヴィ=ストロース、ボーヴォワール、クロソウスキーについて語ってもらった後、デリダにおける結婚概念が孕む「優先性」の批判的検討を分析した。最後に、2011年2月10日(木)に、フランス・パリ、高等師範学校で行なわれた国際シンポジウム「アジアにおけるフランス現代哲学」において、契約・優先性・個人の三つの概念について、ロック、カント、ヘーゲル、アドルノ、デリダ、ドゥルーズらの概念を再検討した。以上の発表はいずれも、これから本格的に取り組まれるべき主題を先取りし素描したものであり、今後もこの取り組みを続けていきたいと考えている。
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Research Products
(11 results)