2010 Fiscal Year Annual Research Report
美術の教育における「抽象表現」の実技指導方法の構築と実践
Project/Area Number |
21830066
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
渡邉 美香 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (30549100)
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Keywords | 美術教育 / 抽象表現 / 素材体験 / 表現実技指導 / 現代美術 |
Research Abstract |
本研究では、現在、美術科の授業で扱われにくいとされる「抽象表現」を学校教育に取り入れる指針として「美術教育における『抽象表現』の実技指導方法の構築」を目指した。本年度では、前年度にまとめた「抽象表現」の基礎と技術レベルの段階をふまえ、(1)中級者対象の実技指導(2)上級者対象の実技指導、について内容・方法を検討した。具体的には、(1)において、(1)モホリ=ナジ等の文献研究および造形理論に基づく課題の設定、(2)大学での授業実践記録の分析、(3)中級編指導内容・指導方法・評価について研究を行った。(2)については、(1)現代芸術家やモホリ=ナジの文献研究、(2)作品制作発表の記録分析、(3)上級編指導内容・指導方法・評価についての研究を行った。(1)、(2)を論文にまとめ発表し、さらに光と映像を用いた作品を制作、ギャラリーで展示発表した。本研究では、初級での素材体験を重視した指導に加え、中級では学習者が制作のテーマを決める手立てとなる指導方法の提案、上級においては制作に必然性が生じ高度な完成度をもつ作品を目指す指導を提案した。指導方法に関しては、米国フィラデルフィア地区の小学校と美術館との連携授業実践の記録をもとに、現代美術の扱い方に関する方法を分析し、口頭発表を行った。「抽象表現」は、表現を専門的技巧の問題から解放し、誰もが表現者として自らを高めることのできる方法の一つである。「抽象表現」を現代の美術教育に取り入れることにより、造形的な面白さを発見し、新しいものを生み出す能力の育成が見込まれる。これは、手や目を駆使して工夫して物を作るという、日本人が本来持っている創造力を今一度再生することでもある。「抽象表現」を扱う本研究は、現代社会に生きる日本人の心のバランスを支えるなど、豊かな感性を芽生えさせ、心の豊かさを知る人間の育成を促す美術教育の中で、今後の日本の教育文化に貢献できると考える。
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Research Products
(3 results)