2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
今井 貴子 Seikei University, 法学部, 講師 (60552859)
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Keywords | 政治学 / ワークフェア / 政党 / 制度再編 / 福祉国家 / イギリス / 労働党 / 福祉から就労へ |
Research Abstract |
平成21度の研究では、第一に、1997年に労働党政権が成立するまでの福祉国家改革構想と党内の権力配置の分析、第二に、総選挙マニフェストを作成するさいの党首脳部の選挙戦略構想と党内の異なる勢力間の利益調整過程を検証した。研究の遂行のため、イギリス各都市で労働党の党内資料の収集、および党関係者とのインタヴューを行った。この調査研究によって、1) 労働党では長期間にわたって、各国の社会福祉モデルを参照するとともに、国内の学識経験者、ジャーナリスト、経営者、組合関係者、宗教関係者などを広く動員しながら綿密な制度設計が行われていたこと、さらに、こうした政策学習、党内論争の過程を経て、労働党は1995年までには保守党政権下の政策と区別される福祉国家再編の明確なオルタナティヴを有していたこと、2) この改革構想は、総選挙直前に選挙戦略上の理由から党首脳部の決断によって縮小を迫られたことを把握した。新たな成果は、労働党内には常に一貫して支配的な政策アイディアが存在していたのではないこと、議会労働党内では多くの議員がそれぞれの構想を独自に公表していたこと、党内の意見調整の過程は党組織構造と権力配置に強く規定されたこと、党首脳部の認識してきた「民意」と実際のそれには齟齬があることなどが明らかになったことである。この分析は、政党がもつ政策アイディアと戦略構想が、政権成立後の改革能力をどのように促進し、あるいは制約するのかを考察するうえで重要な材料を提供する。本研究の目的に照らせば、制度改編と政党政治の力学を解明し、政権交代による刷新性や継続性の生じる要因を理論的、実証的に示すために不可欠な手掛かりを得ることができたといえよう。なお平成21年度に行った調査研究の成果の一部は、平成22年度6,月の比較政治学会、同10月の政治学会の分科会でそれぞれ報告、および「ワークフェアの比較政治(仮)」として共著に収める予定である。
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Research Products
(1 results)