2009 Fiscal Year Annual Research Report
三次元輻射流体シミュレーションで探る銀河形成の物理
Project/Area Number |
21840015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡本 崇 University of Tsukuba, 数理物質科学研究科, 助教 (50541893)
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Keywords | 銀河形成 / 数値シミュレーション / 宇宙論 |
Research Abstract |
WMAP衛星による宇宙マイクロ波背景輻射の観測等により,我々の宇宙の標準モデルとしてのコールドダークマターモデルが確立された.ところが,このモデルは,宇宙の大規模構造等を非常に良く説明する一方で,銀河よりも小さなスケールでは数値シミュレーションにより様々な問題が指摘されていた.そのうちの一つとして「衛星銀河問題」がある.これは,コールドダークマターモデルが例えば我々の住む天の川銀河の周囲の衛星銀河の数を観測されるよりも一桁以上多く予言するというものである.我々は銀河形成において重要な役割を果たすと考えられる様々なバリオンの物理過程(ガス冷却,宇宙再電離紫外背景輻射によりガスの加熱,超新星爆発によるガスの加熱及び化学進化等)を考慮した未だかつてない高解像度の銀河形成シミュレーションを行った.その結果,超新星爆発によるガスの加熱が十分に効けば,コールドダークマターモデルのもとでも,観測される衛星銀河の数や金属量を再現できることを明らかにした.特に,宇宙再電離による銀河間ガスの加熱により,その後銀河を形成して明るい衛星銀河となれるダークマターハローとガスを失って,星を形成することができずに暗黒衛星銀河となるダークマターの2つに分かれることを明らかにした.これはコールドダークマターモデルの長年の問題を解決しただけではなく,衛星銀河の形成シナリオとしても新しく非常に重要な研究成果である.一方,衛星銀河の性質を再現するためには超新星爆発のエネルギーのほぼ全てが,銀河風の運動エネルギーに使われなければいけないことも明らかになった.これは超新星爆発以外の加熱源が銀河風の生成に関わっていることを示唆し,今後,若い星団からの輻射等を考慮したシミュレーションを行う必要があるだろう.
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Research Products
(3 results)