Research Abstract |
射出成形を用いて,高アスペクト比ナノ構造を生産する方法を提案・開発し,それを用いて新しい光学素子を創製することが目的である.射出成形は原理的にスループットが高いが,ナノ構造を転写することは難しい.当然,高アスペクト比構造はさらに困難になる.樹脂が金型に触れた瞬間にスキン層と呼ばれる固化層が形成されるためである.本研究では,その固化層の形成を防ぐために,金型表面を,樹脂射出中のみガラス転移点以上に温めておく熱アシスト射出成形法を提案し,開発する.また,この方法で製作したナノ構造を用いて新しい光学素子を創製する. (1)金型システムの製作 DVDなどの光ディスクの成形に用いられているNi電鋳金型を用いた.この金型を,射出成形の金型ベースに取り付けるが,その間に薄膜ヒータを入れた.窒化アルミニウム(AlN)基板上に,導電膜として厚さ約500nmのCrスパッタ膜を成膜し,その上から絶縁層としてSiO2を約1μm成膜する.この薄膜ヒータのCr層に電流を流すことで,Ni電鋳金型を加熱する. (2)熱アシスト射出成形の結果 ピッチ90~800nm,アスペクト比1~2のNi電鋳金型を用いて熱アシスト射出成形を行った.樹脂は主にポリスチレン(Tg:100℃)を用いた.常温のまま成形すると充填率が低いのに対して,射出時の金型温度を120℃程度に上げて成形すると,ほぼ充填されるのを確認した.この場合のサイクルタイムは13秒であった. (3)反射防止構造の成形 半波長程度のピッチ,深さ波長程度のコーン形状またはホール形状を樹脂表面に施すことで,面内平均屈折率を傾斜させることで,反射防止構造を製作することができる.(2)の熱アシスト射出成形を用いて,ピッチ200nm深さ500nm程度のコーンアレイを成形したところ,金型を温めた場合は充填率が高く,反射率ももともと5%であったものが,1%以下に低減できた.
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