Research Abstract |
干潟造成による底生生物の生息地創出の再現性を評価するため,徳島県阿南市大潟人工干潟(泥干潟)・徳島市マリンピア沖洲干潟(砂干潟)の2つの干潟において,隣接地にそれぞれ類似した物理的環境特性を持つ干潟を新たに創出しその後の底生生物の加入状況を追跡した. ・大潟人工干潟(泥干潟)造成後16年が経過した大潟浚渫土人工干潟における優占種,シオマネキ(スナガニ類)とフトヘナタリ(ウミニナ類)は,新規創出干潟においても優占したが,異なる時間・量的反応(シオマネキ:加入速度=早,加入量=少,フトヘナタリ:加入速度=遅,加入量=多)を見せた.シオマネキは個体間相互作用が強く,縄張りの範囲や巣穴の密度を勘案すると,実験区の面積が狭いため,生息個体数が制限されていたと推察される.また,実験区における流速が早かったため,幼生による定着も少なかったものと思われる. ・マリンピア沖洲干潟(砂干潟)底生生物の個体数は,既存の干潟においてより安定的であった.一方種数は,常に既存干潟が新規創出干潟を2~5種上回っていた.また,生物多様性に関しては,既存干潟が多様で安定的であったが,創出干潟も徐々に多様化の兆しが見られた.新規創出干潟の特性として,既存干潟に生息する3種が未だ出現しておらず,また出現数が増加,減少,安定傾向にある種がそれぞれ見られており,遷移途中であると推察される.さらに,アサリの加入時期や回数が両干潟で異なり,総合的にみると,創出干潟の状況は既存干潟と異なっていた. 上記より,両新規創出干潟は共に現時点で既存干潟の状況を再現できておらず,種による分布特性の違い,及びその要因となる生態的特性と環境条件との関連性のより一層の理解が重要であることが示唆された.さらに,その評価過程においては,種間の環境に対する時間的反応性,生活史,寿命等の違いを考慮した,長期的な実験・観察が必要であると考えられる.
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