2009 Fiscal Year Annual Research Report
動物の闘争記憶における生態学的意義と至近メカニズム
Project/Area Number |
21870025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡田 賢祐 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 助教 (40550299)
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Keywords | 生態学 / 進化 / 昆虫 |
Research Abstract |
本研究計画は闘争と記憶に焦点を当てたものであり、闘争と武器形質のモデル甲虫として有用なオオツノコクヌストモドキを使用して、以下の研究を展開した。本種のオスでは、メスをめぐる戦いが起こること、またその戦いの敗北を4日間記憶できることがすでにわかっている(Okada & Miyatake 2010 Behav Ecol Sociobiol)。ここでは、最初に記憶時間がなぜ4日間維持されるのかを数理生物学的手法であるIndividual Based Model(各個体の状態を考慮したモデル)を用いて解析を行った。オオツノコクヌストモドキの生態パラメータを参考にして、闘争による利益(交尾成功)、闘争によるコスト(怪我による死亡)などの関数をモデルに組み込み、シミュレーションを行い、戦いによる利益およびコストに応じて、敗北の記憶時間がどのように変化するか調査した。具体的には、200個体の同じ敗北記憶時間を持つオス(在来型)と異なる記憶時間を持つ1オス(変異型)から成る集団で、ランダムに選んだ2オスを対戦させて、変異型/在来型の相対適応度を調べる。2000回のシミュレーションを行い算出した相対適応度から、仮想個体群の最適な平均敗北記憶時間が4-5日間であることが分かった。このモデルの結果は、本種の実証研究のデータと一致する。 また、本種のオスは敗北経験を覚えている間は、まったく戦わない。すなわち、戦いに投資を行わないのだが、その代わりに射精形質への投資を増やした。この結果は、オスが敗北経験による学習によって、交尾後のオス間競争である精子競争の投資を調整することを示している。学習によって行動や形質への投資を調整することで、このオスは効率良くメスを獲得することができるのだろう。またこのオスの交尾行動に関係する形質への投資配分には、遺伝的な基盤があり、また幼虫時の発育条件で投資配分も変化することがわかった。これら結果は、国内外の学会等で高い評価を受け、一部は専門の国際誌に掲載されている。
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Research Products
(6 results)