2010 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍関連遺伝子FHITと担癌犬で検出されたその遺伝子座における変異の解析
Project/Area Number |
21880032
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
平岡 博子 山口大学, 農学部, 助教 (10550981)
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Keywords | 担癌犬 / 癌抑制遺伝子FHIT / ゲノム欠失 / 腫瘍マーカー / 獣医学 |
Research Abstract |
本研究は、腫瘍抑制遺伝子であるFragile Histidine Triad(以下FHIT)遺伝子座intron 4領域において、体細レベルで生じているゲノムの欠失(Int4D)に関し、FHIT発現との関連性、ならびにInt4Dが新たな犬の腫瘍マーカーに成り得るかを検討するものである。本研究に供した犬の腫瘤サンプルは、現在のところ計45検体となり、その内訳は腫瘍性腫瘤サンプル(良性および悪性腫瘍)37検体、非腫瘍性腫瘤サンプル8検体であった。これら各腫瘤サンプルからDNAを抽出し、PCR法によりInt4Dの欠損を確認した。結果として、腫瘍性腫瘤サンプルでは20/37検体(54.1%)でHeteroもしくはHomo接合性のInt4Dが検出され、1/37検体ではHouse keeping遺伝子として用いたCμ遺伝子の増幅は認められたものの、Int4D領域の増幅を認めなかった。一方、非腫瘍性腫瘤サンプルにおいても5/8検体(62.5%)でHeteroもしくはHomo接合性のInt4Dが検出された。またInt4Dの検出の有無と、同サンプルにおけるFHIT遺伝子発現、Fhit蛋白発現の間には相関性が認められなかった。少なくとも本研究の結果からは、Int4Dの出現が腫瘍症例において優位に認められる事象とは言えず、またFHIT遺伝子の発現との関連性も見出すことはできなかったことから、本領域を犬の腫瘍マーカーとすることは困難と思われた。現在NCBIに登録されている犬のゲノム配列には、FHIT遺伝子座のInt4領域の欠失は認められない。しかしながら本領域は犬のSINE配列であり、またintron領域に存在することから、犬種もしくは個体により配列の異なる遺伝子領域である可能性が示唆された。そのため犬種ごとの発現傾向を検討した。すると、柴犬では4/4検体でHomo接合性のInt4Dを、またM.ダックスフントでは、7検体中4検体がHomo、3検体がHetero接合性のInt4Dを示していた。そこでこれら2犬種に関し、さらに別個体から末梢血DNAを抽出して解析を行なった所、柴犬では7/7検体(腫瘍罹患犬4検体、非腫瘍性疾患罹患犬3検体)がHomo接合性のInt4Dを、M.ダックスフントでは5/6検体(腫瘍罹患犬2検体:Homo 2検体、非腫瘍性疾患罹患犬3検体:Homo 1検体、Hetero2検体)でInt4Dが検出された。よって、少なくともこれら2犬種ではInt4Dの発現に一定の傾向を示す可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)