2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21890026
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鍋倉 宰 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 研究員 (80550095)
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Keywords | 移植片対宿主病 / GVHD / DNAM-1 / 抗体療法 / 骨髄移植 |
Research Abstract |
移植片対宿主病(GVHD)は同種骨髄移植後に起こる重篤な合併症の一つである。GVHDの本態はドナー由来T細胞によって引き起こされるアロ反応性免疫応答であるが、その発症の分子機序は完全には明らかになっていない。DNAM-1は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、T細胞などに恒常的に発現する活性化受容体である。本研究では、GVHD発症におけるDNAM-1の関与を検討し、DNAM-1がGVHD治療の有用な分子標的となり得るかを検討した。GVHDマウスモデルとしてB6マウスの脾細胞を半致死量放射線照射したB6C3F1マウスへ移入する実験系を用いた。DNAM-1欠損マウス由来脾細胞を移入されたレシピエントマウスは、DNAM-1野生型脾細胞を移入されたマウスと比較し、有意に高い生存率を示した。また、抗DNAM-1中和抗体を予防的に投与されたレシピエントマウスの生存率も有意に亢進した。これらレシピエントマウスにおけるドナーCD8陽性T細胞数は各対照群に比して少ないことから、DNAM-1はドナー由来アロ反応性CD8陽性T細胞の増殖を促進することが強く示唆された。実際にin vitroアッセイにおいて、DNAM-1の共刺激によってドナー由来エフェクターCD8陽性T細胞の細胞増殖とIFN-γの産生が増強することが確認された。更に、明確なGVHD発症が確認された移植後14日目から抗DNAM-1中和抗体を治療的に投与したところ、レシピエントマウスの生存率が有意に亢進することが確認された。このGVHD治療効果は、マイナー組織適合抗原不一致骨髄移植後GVHDマウスモデルを用いても確認された。 以上から、DNAM-1はGVHDの発症に決定的な役割を担っていると考えられた。現在まで、GVHDモデルマウスを用いた実験系において、明確なGVHD発症後に中和抗体投与によって顕著なGVHD治療効果が得られた分子標的はほぼ皆無であることから、DNAM-1はGVHDの予防および治療における新規の有用な分子標的であると考えられた。
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Research Products
(7 results)