2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳内に潜伏感染するヘルペスウイルスによる,気分障害の発症および病態変化の研究
Project/Area Number |
21890260
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
小林 伸行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20385321)
|
Keywords | 気分障害 / ヒトヘルペスウイルス6 / 動物モデル / うつ病 / 双極性障害 / アストロサイト / SITH-1 / 慢性疲労症候群 |
Research Abstract |
【研究の目的】本研究は、我々が発見したヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の新規潜伏感染特異的遺伝子タンパクSmall protein encoded by the intermediate stage transcript of HHV-6(SITH)-1と、気分障害との関連を明らかにすることを目的としている。本年度は、アデノウイルスベクターを用いて、SITH-1をマウス脳に発現させることにより、気分障害を引き起こすかどうか、行動実験を用いて検討した。さらに、SITH-1を脳に発現させたマウスが有用な気分障害の動物モデルになり得るか検討した。 【方法】アストロサイト特異的に働くglial fibrillary acidic protein(GFAP)プロモータ制御下でSITH-1を発現するアデノウイルスベクターを作成した。このアデノウイルスを生後24時間以内のマウス脳へ接種し、成長後、マウスのうつおよび躁状態の評価のため、各種行動実験を行った。 【結果・考察】マウス脳で、GFAP陽性細胞に一致したSITH-1の発現を間接蛍光抗体法により確認した。また、行動実験において、3週齢のSITH-1発現マウスでは、尾懸垂テストでの無動時間の低下、Prepulse Inhibition(PPI)の障害を認めた。一方、5週齢では、尾懸垂テストでの無動時間の延長および自発運動量の低下を認めた。すなわち、アストロサイトにSITH-1を発現させることにより、マウスの躁およびうつ様行動が引き起こされた。これらの結果から、SITH-1は気分障害発症の機序に関与し、SITH-1を発現させたマウスは新たな気分障害の動物モデルとして有用であることが示唆された。また、本研究は気分障害診断のためのバイオマーカー開発への応用が期待される。
|
Research Products
(2 results)