2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21904008
|
Research Institution | 香川県立丸亀城西高等学校 |
Principal Investigator |
真鍋 篤行 香川県立丸亀城西高等学校, 教諭
|
Keywords | 明治期の水産誌 / 漁網の分類 / まき網 |
Research Abstract |
歴史学や民俗学において、漁具に関する研究は少なく、漁具の分類についても定説のない状況である。このような中、明治時代の各地の水産誌に掲載された絵図やその解説は漁具研究のための資料の宝庫だが、これまで十分に活用されてこなかった。今回、まき網に対象を絞り、比較のため近世の絵図も一部含めて調査を行った。 調査事例をあげると、東北地方では『宮城県漁具図解』に巻網が掲載され、関東地方では千葉県館山にさんま網の絵図が残り、東京湾については『東京採魚採藻図録』に六人網が掲載されていた。さらに瀬戸内地方とその周辺地域については和歌山県の『紀州漁業絵巻』にサバやアジを捕るシバリ網が掲載され、鯛を捕る大網、カズラ網、シバリ網は『讃岐鯛網図解』、愛媛県の『漁業旧慣調べ』、大分県の『鯛縛網漁利害調査復命書』などに掲載されていた。さらに広島県鞆に鯛網図が残り、新潟県でも瀬戸内地方から伝播したシバリの調査を行った。九州地方では、『福岡県漁業誌』にボラ網が、『長崎県漁業誌料』『水産博覧会鹿児島県出品漁撈説略』、『熊本県漁業誌』にアゴ網が掲載されていた。山陰地方は『島根県下漁具図説』に丈高網が掲載され、北陸地方には石川県の河北潟に巻網図が残っていた。 これらの調査で、現在、姿を消した各種まき網の構造を明らかにした。今後、各種漁網の構造を比較して、これまで定説のない漁網の分類案を確立し、さらに漁具の構造の相違の解明により、漁具を媒介とした人と自然の関わりの相違を明らかにしたい。まき網は、移動性の高い漁場利用や生活形態が、定置網は、固定的な漁場利用や生活形態が生まれやすいというように、漁具の研究を媒介に、人と自然の関わりの構造の違いを明らかにする、近年注目されている環境史とも関わる領域の研究の開拓をおこないたい。
|