2009 Fiscal Year Annual Research Report
契丹国(遼朝)時代の出土漢語資料に関する調査研究と資料集成
Project/Area Number |
21904012
|
Research Institution | 奈良市教育委員会 |
Principal Investigator |
武田 和哉 奈良市教育委員会, 文化財課埋蔵文化財調査センター, 技術職員
|
Keywords | 契丹 / 北アジア史 / 墓誌 |
Research Abstract |
1.研究目的 契丹国(遼朝)は、北アジアおよび華北の一部を領域として10~13世紀に強大な勢力を有した国家であり、北方遊牧民族である契丹族が主導して成立した。その領域内には契丹族以外の遊牧民や多くの漢人が居住し、複数の民族から構成されていたことが最近明らかにされつつある。漢人の果たした役割は非常に重要であって、漢人の人口は契丹人の人口を凌駕するほどであったとの推計もある。 この契丹国社会の中で、契丹語・契丹文字とともに漢語・漢字の使用は頻繁であり、近年、契丹国の故地に該当する内蒙古自治区や遼寧省・河北省北部、北京市などでは、契丹国に関する石刻史料の出土・発見が相次ぎ、乏しい現存の文献史料を補完するものとして非常に注目されている。これらの漢語史料は、契丹国の歴史研究において重要不可欠な存在であり、本研究では、それらの実態把握と新出資料の確認・研究等を目的とした。 2.研究方法 本研究では、最初に最新研究成果や報告資料等の収集と確認を行い、掲載されている拓本・写真等の整理・分析を実施した。次いで実施した現地調査では、各種の漢語資料の実見を行うとともに、新出資料の情報収集を行った。また、現地機関の許可を得て写真撮影等も行いその画像解析および合成写真等のデータを作成した。さらに、入手した拓本資料をスキャニングして、精密な画像を作製した。 3.研究成果 現時点で拓本・写真が公開・報告されている漢語資料については、近年の新出資料数の増加は著しく予想を超えており、限られた時間と予算の範囲内では作業完遂は到底困難であると判断されたため、今回の調査研究では主として墓誌資料(墓に埋葬される故人の生前の事績等を記した資料)に範囲を限定することとし、上記の調査・研究活動においては、相当数の墓誌資料の収集をすることに成功した。また、新出資料のいくつかについても拓本資料を入手することができた。 これらの成果と基本情報のデータは報告書『契丹国(遼朝)墓誌資料集成I契丹人編1』にまとめ、少部数ながら刊行した。その内容は、契丹国(遼朝)史関係の研究者や関係機関等に配布等をして公開する予定である。本報告書は、写真や拓本といった客観的データを併せて収録しており、一次資料の集成本として大きな利用価値があると考えている。
|
Research Products
(3 results)