Research Abstract |
今日,世界的に食料危機や食の安全が注目されており,食・エネルギー・環境問題がかつてこれほどまでに問われたことはない,このような問題に対応し,持続可能な社会をめざし未来を拓くには,人間活動の根源である「食」そして,その「食のライフサイクル」に潜む課題を多角的に捉え本質を見抜く力の育成が重要である。本研究では,家庭科からESDへのアブローチとして,わが街広島とベラルーシの代表的食材であるじゃがいもを取り上げ,その様々な調理法を知り,調理体験・栽培体験などと行うとともに,自然環境や歴史的文化的環境を知ることで理解の深化を図り,先人たちが培ってきた生活文化を見直させることにより,体系的な思考力や本質を見抜く力および多様性の尊重を育む教材の開発を試みた。 まず,じゃがいも消費量世界一のベラルーシを訪問し,その調理法を含めた食文化を取材するとともに,広島安芸津のじゃがいもについても取材し,資料の充実を図った。また,対象クラスの学級園を利用し,技術科教諭の協力を仰ぎながら,春と秋の2回じゃがいもの栽培収穫体験を行い,道徳や特活の時間での環境学習や平和学翌,保護者の協力による各家庭での調理などのつながりを図りながら,家庭科の授業を構築した。 『じゃがいも』という一つの食材を様々な側面からスポットをあてることで,生徒のじゃがいもに対する見方が変わり,環境問題とも結びつけながら,生活を見直させることのできる実践になった。授業時数の限られた家庭科の授業を道徳や特活とリンクさせ,持続可能な社会を考えさせる授業の構築を行ったことで,より深まりのある授業となり,生徒に,新たなライフスタイルを考えさせる大きなきっかけになったと考える。また,保護者と連携をとりながらの実践は,保護者と生徒がともに生活に関わる課題を考え,それを解決する方法を見出すためのコミュニケーションの場を作ることができた。
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