2009 Fiscal Year Annual Research Report
中高一貫校の教員としての社会化と教員文化に関する実証的研究
Project/Area Number |
21906010
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Research Institution | 大阪市立咲くやこの花中学校・高等学校 |
Principal Investigator |
尾場 友和 大阪市立咲くやこの花中学校・高等学校, 教員
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Keywords | 中等教育 / 教員文化 / 学校組織 |
Research Abstract |
中等教育多様化の一環として設けられた中高一貫校は370校(平成21年4月)にのぼり、特に公立中高一貫校の誕生により、従来の中学校、高等学校につぐ第3の学校として年々認知度を増してきた。だが、中学校と高等学校はともに中等教育機関に位置づけられ教科担当制が敷かれている一方、入学選抜の有無や学修システムの有り様など、実務的に異なる点が多いのも事実である。本研究ではこうしたシステムの違いから生じる教員文化に焦点をあて、中高一貫校という新しいシステムでどのように教員文化が構築されるべきかを検討することを目的に、関西学院大学同窓教員を中心に質的調査をおこない以下の2つの観点から分析を試みた。 (1)教科指導と生徒指導観 公立中学校では教科指導よりも生徒指導の重要性が意識され、教科担当制であるにもかかわらず教科に対する専門意識が高くないことがわかった。公立高校では勤務する学校のタイプによって意識が異なり、進学校では教科指導に特化する傾向があるに対し、困難校では中学校同様に生徒指導に重きを置いた指導観を持っていた。だが一般的に高校教員は教科への専門意識が強いといわれており、困難校勤務の教員は、意識と現実のギャップに戸惑いを感じていた。私立中高一貫校では、公立高校の進学校タイプの指導観をさらに教科指導に傾斜したものとなり、生徒指導ができなくても教科指導ができれば問題なしとする指導観もみられた。公立中高一貫校では、公立高校の進学校タイプと同様の傾向がみられた。 (2)専門職・教師としての自律性 公立中学校では、学校・家庭・地域が文字通り一体化した教育活動が特に求められる。したがって管理職も含めた全教職員の協働が多くの場面で見受けられるが、一方で個々で取り組む場面が少なく自律性も低い。公立高校、私立中高一貫校、公立中高一貫校では、広域からの生徒募集であるため地域との関係を意識することは少なく、学校組織をあげて一致団結という場面は乏しい。だが、教科に対する専門意識の強さから教科集団としての結束力は強く、教科に関して他教科等からの干渉を受けないことが暗黙の理解となっている。 以上のような学校文化の違いを解明することができたが、一般中学・高校と人事交流を深めながら進展していく公立中高一貫校において、そこに所属する教員の社会化については十分検討できたとは言い難い。引き続き今後の課題として検討を深めたい。
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