2009 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な社会を創る数理科学的思考力を育む関数領域の新しい学習プログラムの開発
Project/Area Number |
21908002
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Research Institution | 渋谷教育学園幕張中学・高等学校 |
Principal Investigator |
荒木 昇 渋谷教育学園幕張中学・高等学校, 教員
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Keywords | 数理科学的思考力 / 中高一貫教育カリキュラム / 持続可能な関数認識能力 |
Research Abstract |
○研究目的 旨本研究では、数学と理科の従来重視されていた見方や考え方を統合して、現代の様々な分野で応用されている「数理科学的思考力」を育てる新しい学習プログラムの開発をねらいとした。これまでの学年別の配列や単元構成にはこだわらずに、生徒の実態と可能性に即した基礎・基本から発展までの学びのプロセスを一つの学習プログラムの中で具現化して、生徒の思考力育成の可能性を追求していくことを考えた。具体的には、初年度については関数領域に重点化して、GRAPES等の教材ソフトを有効活用して、視覚的操作活動を取り入れた中高一貫教育の学習プログラムの開発とその素材選び、また生徒の思考力の成長を具体的に評価するシステムの研究をねらいとした。問題解決の際に生徒が自分の作成したグラフや動画モデル等を使って、考えたことを伝える活動や、そのために様々な材料を用いてパソコンソフトを活用して関数領域を理解するモデルを作成したりする自己評価活動を学習プログラムに取り入れることによって「数理科学的思考力」をさらに高めることにもなると考えた。これが新学習指導要領で求められている持続可能な社会を創出するための知識基盤社会における必要不可欠な能力の育成にもつながると考えたのである。同時に、現在の数学教育における単元や領域の学習のつながりを再度とらえ直し、中高一貫校の授業展開の効果を最大限に活かしながら、素材の本来の意義を感じることができるような教材化の実践プランを模索して、さらにそこから、幅広い見方や考え方を育てるアプローチの方法を工夫し、実際の指導に活用することで、より有効な実践につながるということも検証していこうと考えた。 ○研究方法 まず最初に文献資料および先行研究の調査を行って、持続可能な関数認識能力の育成に関する文献や市販の教具を活用した授業実践の例を調査した。次に教材開発の段階として、関数領域の題材から授業で実践できるような具体例を選び、指導可能な教材として開発を進めた。生徒にどのような思考力・操作活動を求めるか吟味を行った。中高一貫校のメリットを生かした実践授業での指導案を作成した。同時に視聴覚機器の活用をポイントとして、GRAPESによるグラフ作成体験や移動のイメージづくりをプロジェクターやパソコンを併用した。また、渋谷幕張中学校の1学年および2学年の数学の授業の中で授業実践を行い、生徒の自作モデルや様々な思考・発表の様子を複数の映像で記録・編集して生徒の振り返りに活用した。関数の題材を教材化した授業について、様々な視点から生徒に事前・事後のアンケートを行い、実施上の問題点や効果的な扱いについて分析を行った。 ○研究成果 持続可能な関数認識能力を身につけていくことを題材にした、いくつかの学習プログラムの開発を中心に研究を進めた。例として、日常の事象の中から関数関係を見いだして、式やグラフの考察ができるようになるものや、パソコンソフト「GRAPES」を活用して、様々な式からグラフを作成して、概形の変化や変域について操作活動を通して理解を深めるものなど、これまでの学年配列にこざわらず発達段階を意識しながら、中高一貫カリキュラムの特性を生かした実践授業を行うことができた。生徒のオリジナルの教材作りをもとにしながら授業展開を行ったため、事前事後の生徒のアンケートからは、学習への動機付けや興味・関心の持続性、自己学習力の高まり等の観点で本研究の成果があったと検証できる結果が得られた。また、授業の振り返りの際には、生徒個人の記録ファイルと併せて、映像による記録を活用することによって、自己評価力の育成につながり、成長の実感を生徒に味あわせることができた。また、関数認識能力の変容について教師と生徒がともに共通理解を図ることができたと考えられる。
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Research Products
(1 results)