2009 Fiscal Year Annual Research Report
酒石酸ナトリウムアンモニウム再結晶の際の結晶核発生機構に関する研究
Project/Area Number |
21915003
|
Research Institution | 東京都立 小川高等学校 |
Principal Investigator |
村田 吉彦 東京都立 小川高等学校, 教諭/公立学校
|
Keywords | 酒石酸ナトリウムアンモニウム / 不斉晶析 / 再結晶 |
Research Abstract |
高校では光学異性体を分子模型等で教えているが、生徒にとっては抽象的でわかりにくい。L.Pasteurがブドウ汁から合成したDL-酒石酸ナトリウムアンモニウム(tart)は、分子内の非対称性の存在やファントホップの炭素原子正四面体説とからめて、光学異性体を歴史的におもしろく説明できる教材である。この結晶は、小面の切り口が左右対称なので鏡像体であることが眼で見てわかりやすぐ、宝石のように美しい無色透明な形状は万人の心を捉える。私の研究の目的は、1.生徒へ提示できるtartのD体とL体の大きな結晶をつくること。2.DL体の溶液からD体、L体の結晶を選択的に析出させること。3.再結晶の際の一次核発生機構を調べることである。 1.過飽和度を高めるために、DL-tart過飽和溶液に超音波の処理を行うと析出する結晶が小さくなった。溶液に種結晶をつるすと雑晶がつきやすく、温度降下度を小さくしないと結晶が白濁する。最も適切な大きな結晶を得る方法は溶媒の自然蒸発法であり、種結晶がある時で3cm、無くても1cm程度の透明な結晶が得られた。ただし、結晶が大きくなると小面の形が不明確になりやすかった。 2.DL体の過飽和溶液にD-フェニルアラニンの結晶を少量添加すると、D体が出ず、L体のみが析出する、いわゆる不斉晶析が起きた。DL体の結晶だけが析出することもあった。3.DL体の過飽和溶液は結晶が析出しにくく、DL体の結晶が出やすい。Pasteurが行ったようなD体とL体の分離晶出は偶発的であり、数回の再結晶を試みる必要があった。DL体の過飽和溶液に共存物質として、雲母やアミノ酸、格子定数の似た結晶、ショ糖、トレハロース、イオン性物質のNaC1,CaCO_3,CaSO_4などを付加したが、分離晶出への影響は無かった。10℃以下の低温は結晶の析出を促したが、DL体が析出する。ただし、一度D体とL体に分離晶出した結晶を混ぜて室温から再結晶すると、D体、L体の結晶が分離して晶出した。溶媒の自然蒸発法が、経験的にD体、L体の結晶が最も分離晶出しやすい。再結晶を繰り返すと、結晶のからみあいが減り、形も大きくなる。再結晶の際の一次核発生を調べるために、水やミョウバン溶液の過飽和状態に雲母やハロゲン化銀などを添加したら、瞬時に結晶析出がおきた。
|
Research Products
(2 results)