Research Abstract |
【研究目的】本研究の目的は,茨城県水戸市周辺の台地の地下の地層の構造,年代を明らかにすることである.そのため,水戸市南東部の台地縁で深度40mのボーリング掘削を行なう.水戸周辺の那珂台地,東茨城台地は約12.5万年前の海成段丘(海岸段丘)からなり,その地下にはそれより古い中期更新世の見和層と呼ばれる地層がある.見和層の泥,砂礫は海面変動に影響して堆積したと考えられるが,その重なり方,堆積した年代は不明確である.申請者は産業技術総合研究所の植木岳雪研究員,首都大学東京の鈴木毅彦准教授と協力して,昨年度,サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)の「那珂台地のなりたち"水戸一高のある台地の生い立ちを探る"」というテーマで,高校生を対象とした地学の講座を行った.そして,高校のある水戸市中心部の台地上で深度30mのボーリング掘削を行い,台地の地下の見和層のコア試料を採取した.そのコア試料からは1回の海進・海退を示す堆積シーケンス(地層の重なり)が認められ,約15万年前のテフラ(火山灰)が同定された.このように,本研究は昨年度のSPPに付随する研究を発展させるものである. 【研究方法】従来,見和層は地下の谷を埋める2つの堆積シーケンスが認められている.SPPで採取されたコア試料では1つの堆積シーケンスしか見いだされなかったが,それはボーリング掘削を行った地点が見和層分布域の縁辺であったためと思われる.したがって,見和層全体の堆積過程,堆積年代を明らかにするためには,見和層分布域の中心部でボーリングコアを採取する必要がある.しかし研究計画調書よりも研究経費が減額されたため,ポーリング掘削地点を水戸市南東部からより上流川の水戸市北部に変更し,ボーリング掘削深度を40mから25mに縮小する.これをふまえて本研究を以下のように計画した.(1)文献調査(2)地形分類(3)ボーリング資料収集(4)ボーリング掘削(5)コア試料の処理・解析(6)堆積過程の推定,堆積年代の決定(7)成果の発信,教育への還元 【研究成果】文献調査,地形分類,ボーリング資料収集作業の後,ボーリング掘削に着手した。上記の理由により掘削深度が40mから25mに縮小されたため,掘削地点を「勝田凹地」と呼ばれるひたちなか市勝倉に決定し,ボーリング(M1-HNKK-1)掘削を行った。文献調査から基盤の中新統に到達できる場所と考えて掘削したが,25m掘進しても基盤岩は現れず,掘削業者の厚意によりさらに3m伸長したが基盤の多賀層群には到達できなかった。その後,コア試料の処理・解析を産業技術総合研究所で行いコアを観察した。しかし堆積年代を決定的に裏づけるテフラは検出されず,MIS(酸素同位体ステージ)による堆積年代は残念ながら同定できなかった。堆積過程についても,コアの堆積物が見和層下部層のものと思われるが,明瞭な堆積シーケンスが確認できず不明である。 今後,さらにコアの詳細な観察を進め,堆積過程および年代の検証を進めて行きたいと考える. 教育への還元としては,申請者の勤務する高校にコアを寄付したので,地学の授業でコア試料の観察や研究成果の紹介を行なっていく予定である.
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